W-Slope
(Walking Spot vol.14

地元の人の近道は断崖に設けられた階段坂

金沢の中心部の観光エリアには坂道が多く見られます。これは金沢城が防衛上の観点から小立野台地の先端に築城されたためで、金沢では坂道が街並みにアクセントを加えています。

市内にある坂道の中でも若い人たちに人気の坂道が、犀川大橋のひとつ上流の桜橋の袂に位置するW坂です。

W坂は犀川べりと寺町台地の境界にある断崖に作られた階段坂で、名前のとおりWの字を書くようにジグザグに上って行きます。

ジグザグと上って行きます

この坂道は藩政期から存在する坂道で、坂上に石工職人が多く暮らしていたことから石伐坂(いしきりざか)と呼ばれていました。元々は桜橋の近隣住民の近道として作られたのだと思いますが、今では若いカップルにとっての絶好のお散歩コースとなっています。

今もこの坂道の正式名称は石伐坂ですが、戦前の旧制金沢四高の生徒たちが、ジグザグと上がって行く坂道を「W」の字に例えてW坂と呼ぶようになったことで、現在ではW坂の呼び名で地元の人たちの間に定着しています。

坂下に設置されている石碑

W坂を下から見上げると「こんなに急な階段を上って行くのか」と怯んでしまいますが、階段の傾斜は意外と緩やかで、1段あたりの段差が小さいこともあって、実際に上ってみるとそれほど疲れません。

また、Wの形状から踊り場でホッと一息つけることも、それほど疲れない理由かもしれません。以前にW坂を下りていく時に、80歳は過ぎているだろうと思える女性とすれ違ったのですが、そのおばあさんもそれほど息を切らすことなく坂道を上って行きました。

上から見下ろすとまさに断崖です

踊り場には井上靖氏の『北の海』の文学碑が

W坂の踊り場にはモニュメントが置かれています。ジグザグの坂道を上って行くと最初に目にするのが「手づくり郷土賞」を受賞した時の記念碑です。そして、記念碑からさらに上って行くと、次の踊り場には井上靖氏の小説『北の海』の文学碑が設置されています。

井上靖氏『北の海』の文学碑

井上靖氏は旧制金沢四高の卒業生で、四高生がこの坂道を「W坂」と呼んでいた時代に在籍していました。

文学碑には原作の一節が記されています。井上氏はW坂を「腹がへると、何とも言えずきゅうと胃にこたえて来る坂ですよ」と紹介し、「この辺で足が上がらなくなる」と続きます。文学碑の場所は、まさに小説の中で足が上がらなくなると述べたポイントです。

もしかすると、階段の段差にさらに小さな段差が設けられたのは、この小説が発表された1968年(昭和43年)よりも後のことなのかもしれませんね。

文学碑を過ぎると坂上まで一直線です。そして、階段を上って行くごとに、犀川と川向うに広がる金沢の中心街が見えてきます。

階段には小さな段差が付けられています

W坂の周囲も絶好のお散歩コースです

W坂を上って寺町通りに出ると寺町寺院群の街並みが広がっています。文字通りお寺が多いことから名付けられた町で、2012年に国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されました。

金沢に所縁のある作家の五木寛之さんは、自身の著書で寺町を金沢の “山の手” と記しています。寺町は金沢の中心部に近い住宅街で、高台に位置することもあって洗練された雰囲気が漂っています。

晴れた日には、あてもなくゆっくりとお寺が並ぶ街並みを歩かれるのもお奨めです。W坂から寺町通りに出て右手に下って行くと10分少々でにし茶屋街に到着します。また、左手に上って行くと10分足らずで辻家庭園です。

寺町には「杉の井」「つば甚」「山錦楼」「金茶寮」とミシュランの星のついた日本料理店が点在していますので、夕暮れ時にW坂をお散歩してお腹を空かせてから夕食に向かわれるのもいいでしょう。

W坂は緑に覆われた雰囲気のある坂道です。坂道に隣接して新桜坂緑地が整備されており、坂下に設置されている「水辺の詩」と題された3人の女性の裸体像は、背景の緑に映えてとても綺麗です。

新桜坂緑地の『水辺の詩』

また、坂上には展望台が設けられ、桜橋とともに金沢の市街地が一望できます。

観光客の方がW坂へ行かれる際のルートは3つです。まず、にし茶屋街から坂道を上って行き、本多通りのひとつ先の路地を左手に入るとW坂の坂上に出ます。

金沢21世紀美術館からは、本多通りを兼六園と反対方向に10分少々も行くと桜橋で、桜橋を渡った先がW坂です。また、犀川大橋から「犀星のみち」に入って桜橋へと至るルートもお奨めです。

展望台から眺める桜橋

地図の下部にある「桜橋南詰」にW坂があります

辻家庭園ホームページ


W坂の近くにある「お立ち寄り」スポット

辻家庭園にし茶屋街 | 室生犀星記念館 | 片町

観光名所から観光名所への距離と徒歩時間

金沢をお散歩