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Kazuemachi-Chayagai*6
(Shincho Kyoka Road)

夢の世界へと通じる風情のある裏通り

金沢を訪れる方の中には、主計町茶屋街と泉鏡花記念館をセットにして予定を組まれている方も多いことでしょう。

泉鏡花記念館は、幻想とロマンの作風で多くの女性読者を魅了してきた泉鏡花の生家跡に建設された記念館で、記念館が位置する通りは「新町・鏡花通り」と名付けられています。

このあたりは下新町(しもしんちょう)という町名で、金沢で旧町名が復活した11の町のひとつです。住宅街と商店街がミックスされた通りには、総菜、茶葉、金箔などの老舗が点在しています。

老舗商店と民家が融合しています

老舗商店と民家が融合しています

下新町の大きな特徴は、それぞれの建物の玄関に鏡花にちなんだ掛行燈が付けられていることです。この行燈は白地に木枠が施され、正面にウサギの絵が描かれています。ウサギは鏡花の生まれた年の干支の向かい干支です。

向い干支とは、十二支の向かい側(7つ先)に位置する干支のことで、鏡花は子供の頃に亡き母から水晶の兎の置物を渡される際に次のように言われたそうです。

「鏡太郎(鏡花の本名)や、これはね、水晶の兎ですよ。鏡太郎は酉年でしょう。酉年から数えて七番目のものを持つと身のお守りになるのですよ。出世をしますよ」(出典:鏡花幻想譚2 海異記の巻 解説「鏡花と兎」泉名月氏著)

また、白地の行燈には『義血侠血』『高野聖』『婦系図』『照葉狂言』などの鏡花の作品名が記されています。そして、玄関先の行燈は商店だけではなく民家にも掛けられています。

行燈の横面にはお店の名前が記されています

行燈の横面にはお店の名前が記されています

久保市乙剣宮は主計町への通り道

泉鏡花記念館の左斜め前にあるのが久保市乙剣宮です。鏡花も子供の頃にはこの神社で遊んだと言われていますが、境内を通り抜けると主計町茶屋街へと下りていく石段坂があります。

この石段坂は暗がり坂と呼ばれ、現実の生活の場から、ひと時の夢の世界へと入って行く誘導路のような趣きを漂わせています。

また、久保市乙剣宮の鳥居の横には記念碑が置かれ、鏡花が小説『照葉狂言』の中で下新町を紹介した一節が記されています。

泉鏡花記念館の斜め前に位置しています

久保市乙剣宮

鏡花は「自分のいる町(下新町)は東より西へ爪先上がりの小路なり」と記しています。この記念碑から右手を見ると大通りへと下っていく坂道があり、大通りには多くの車が行き交っているのが見えます。

また、鏡花は小説の中で、この町は一方だけが大通りに繋がっていて、もう一方は行き止まりになっているので往来が少なく、朝から夕方まで人力車などは一両も通らないとも記しています。

現在もこの通りは車の往来が少なく、自動車の数よりも歩行者の数の方が多いくらいです。

この記念碑に記されている文面を読んでから、右斜め後ろにある泉鏡花記念館へ入って行くのもいいでしょう。

なお、泉鏡花記念館の入館料は一般が300円、65歳以上が200円で高校生以下は無料で入館できます。開館時間は午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分)までで、年末年始と展示替えの期間は休館日です。

泉鏡花記念館

泉鏡花記念館

佃煮にお茶。この小路には老舗の食料品店が

泉鏡花の『照葉狂言』には、自らが暮らす下新町は、かつて商店だった建物が、商いを仕舞って普通の民家になった “仕舞家” ばかりと記されていますが、現在もいくつかの老舗が営業を続けています。

まず、泉鏡花記念館の向かい側には佃煮で有名な佃食品があります。「佃の佃煮」というキャッチコピーを知らない金沢市民はいないと言っても良いくらい、地元では有名なお店です。

佃煮という食品は、東京の佃島で生まれたことから名付けられたと言われていますが、今も金沢の人の中には、佃食品が造ったから佃煮と言うのだと思っている人が結構います。かく言う私もその一人でした。

佃の佃煮

佃の佃煮

下新町には茶葉の老舗である上林茶舗があります。このお茶屋さんは、京都・宇治の「上林春松本店」という創業450年の歴史をもつ老舗から暖簾分けを許された茶舗で、お店の奥にはカフェならぬ “茶フェ” が併設されています。

茶フェでは、仕出し専門の老舗和菓子店である『吉はし』の和菓子と、抹茶、加賀棒茶、和紅茶とのセットが楽しめます。金沢の観光地では抹茶と和菓子のセットで700円~800円という値段を付けるお店が多いのですが、この “茶フェ” では抹茶と和菓子のセットで620円です。

主計町・ひがし茶屋街近江町市場を歩いて移動される方は、立ち寄られるのもお奨めです。

上林茶舗

上林茶舗の向かい側にあるカタニ産業も下新町の老舗のひとつです。1899年(明治32年)創業の金箔メーカーで、業務用の金箔製造がメインですが、一般向けの金箔ショップも営業しています。

ブルーの暖簾に記された「あぶらとり紙」の文字が印象的な店内では、あぶらとり紙をはじめ食用・美容用金箔や金箔グッズが販売されています。個人的には金箔クリアファイルが面白いと思います。

また、このお店では金箔貼り体験を実施しています。お一人様から40名様まで予約可能ですので、金箔工芸にご興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

カタニ産業

主計町茶屋街への行き方


主計町茶屋街の周辺にある「観光してみたいかも」スポット

泉鏡花記念館 | 金沢蓄音器館 | 金沢文芸館 ひがし茶屋街 | 徳田秋聲記念館 | 金沢市立安江金箔工芸館


Kazuemachi-Chayagai
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「159」号線から1本入った裏通りが新町・鏡花通りです

主計町茶屋街は金沢の和文化を表現した街