あかり坂

主計町茶屋街の見どころ vol.3

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金沢の三茶屋街のひとつである主計町茶屋街の裏手はかなりの急勾配になっています。そして、芸妓さんが日本舞踊や雅楽を披露する夜の花街と、市民が日常生活を営む住宅街とは急な階段で結ばれています。

主計町茶屋街とその裏手にある下新町(しもしんちょう)の間には二つの石段坂があります。

いずれの石段坂も人がやっとすれ違えるほど道幅が狭く、夜の帳が下りた後に、人知れず現実の生活から夢の世界へと向かう秘密の通路のように緩やかに蛇行しています。

また、昼間でもあまり陽があたることはなく、薄暗くひっそりと佇んでいます。

二つの石段坂の中で、主計町事務所前の広めの路地へと降りていく坂道は、主計町に通う旦那衆の秘密の坂道として利用されていたことから、かなり以前から「暗がり坂」という名前が付けられていました。

しかし、もう一つの細い路地へと降りていく坂道にはつい最近まで名前がありませんでした。

この石段坂が「あかり坂」と名付けられたのは2008年(平成20年)のことです。

主計町にゆかりのある作家の五木寛之氏が、自身の小説『主計町あかり坂』(後に『金沢あかり坂』と改題)の中で、名もない石の階段を「あかり坂」と名付けました。

少し調べてみると、地元の人たちから五木氏に命名の依頼があったのだとのこと。

五木氏は、泉鏡花の研究家で詩人でもある高橋冬二郎という80歳近い銀髪の老人を小説に登場させ、「暗、と、明。泉鏡花にはあけの明星をよんだ句があります。そこで、あかり坂。よし、これできまった」と語らせています。

この高橋冬二郎なる登場人物は、五木寛之氏自身がモデルなのかもしれませんね。

あかり坂へと続く細い路地

主計町茶屋街が3分でわかる画像集




この坂道は茶屋街で働く人たちの近道

坂下にある石標には五木寛之氏の言葉で以下のように綴られています。

———

暗い夜の中に明かりをともすような
美しい作品を書いた鏡花を偲んで、
あかり坂と名づけた。
あかり坂は、また、
上がり坂の意(こころ)でもある。

平成二十年秋 五木寛之

———

夜の遊びに興じようと気分を高揚させながら茶屋街へと向かう旦那衆の間では、石段坂の下にお茶屋の華やかさを感じる「暗がり坂」を降りていくのが一般的で、あかり坂を降りていく人は少なかったようです。

あかり坂を下ると、昼間でも陽の当らない狭い路地が延びています。

坂下のひっそりとした佇まいから、あかり坂が茶屋街で生計を立てている人たちだけの坂道であったことが伺え、つい最近まで名前が付いていなかったことも十分に理解できます。

あかり坂の石碑

小説『金沢あかり坂』では、主人公の凛は父親から「あの坂をとおること、ならん」とたしなめられ、三十歳を過ぎるまで父親の教えを守っていました。

五木寛之さんの小説と関連して、ひとつ興味深いことがあります。

あかり坂へと続く狭い路地には主計町の現役のお茶屋のひとつ「まゆ月」があります。

まゆ月から2015年11月に新人芸妓の新花さんがデビューしたのですが、小説の主人公と同じ「凛」という源氏名でお披露目されました。『金沢あかり坂』にちなんで名付けられたのかもしれませんね。

坂下のお茶屋の新花さんは小説の主人公と同じ「凛」

主計町茶屋街の見どころ vol.4
五木寛之氏の小説に主計町がたびたび出てきます


浅野川沿いの表通りから主計町茶屋街を訪れる人は、「あかり坂」を見つけるのに少し苦労するかもしれません。「あかり坂」は表通りから裏通りに入って、さらに細い路地を入った先にあります。

「あかり坂」を知らない人の中には、石段坂へと続く細い路地をサラリと眺めただけで通り過ぎていく人もいます。普通の人が通ろうとは思わないような、主計町の人以外は通ってはいけないような雰囲気を漂わせています。

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石段の下は昼間も陽があたりません

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あかり坂は、あがり坂

「暗がり坂」よりも暗い坂道を「あかり坂」と名付けたところに、名付け親である五木寛之氏のセンスを感じます。

昼間の時間帯にこの坂道を下から見上げると、両脇の建物に遮られていた太陽のあかりが石段の上の方に差し込んでいます。

この坂道は下るよりも上っていく方が風情を感じるのは確かです。あかり坂を一段ずつ上っていると、茶屋街という夢の世界から、日常生活が待つ現実の世界へと戻っていくようです。

小説『金沢あかり坂』は次のような文章で結ばれています。

———

「あかり坂は、あがり坂」。そうつぶやきながら、凛は坂の石段を一歩ずつのぼっていった。

———

主計町を訪れる方には、ぜひ「あかり坂」を上られることをお勧めします。

裏通りでは、あかり坂への路地を通り過ぎてしまう人も

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主計町茶屋街の見どころをご紹介

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