金沢文芸館 (かなざわぶんげいかん)
金沢の美術館・記念館 vol.14
(ひがし茶屋街・主計町茶屋街エリア)
ひがし茶屋街から浅野川大橋を渡り真っすぐに行くと、T字路の交差点に、コンクリート造りのアンティークな外観のビルが目に留まります。
はじめて目にする人は「あの建物は何なの?」と思われることでしょう。
その建物が金沢文芸館です。1929年(昭和4年)竣工の縦長の窓と外壁に施された装飾が印象的な3階建ての建物は、竣工当時は最新のビルジングとして街のランドマークであったろうと想像できます。
旧石川銀行橋場支店の建物を金沢市が買い取ったもので、旧いものがお洒落と言われる時代となった今、このビルは街のランドマークとしての地位を取り戻したようです。
2004年(平成16年)には国の有形文化財に登録され、2005年に金沢文芸館としてオープンしました。
まず、建物の特徴は入口が狭いことです。人がすれ違うことができないほどの細長い木枠の扉を手で開けて館内に入って行きます。昔の銀行は人目を避けるように入って、ひっそりと出る場所だったのかもしれませんね。

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五木寛之ファン必見「五木寛之文庫」
入口の脇には青銅版に金文字で「五木寛之文庫」と記されています。文芸館の開設に際しては作家の五木寛之氏がアドバイザーとして協力し、その際に2階に五木氏のコーナーを作りたいとの依頼を受け併設されたものです。
このことについては、著書の『五木寛之の金沢さんぽ』の中でも触れられています。
五木氏は他の都市からの依頼をすべて断っているので、金沢市からの依頼も最初は辞退しようと思われたのですが、「文芸ジャーナリズムの現場を伝えるようなものなら意味のないことではない」と思い承諾したそうです。
エレベーターを降りると、左手に五木寛之氏の文庫本ジャケットの陶板が展示されています。
ファンにとっては作品の中身とともに本のジャケットは思い入れの強いものです。そのジャケットが陶板化されてずらりと並んでいます。ゆっくりと眺めながら、その作品を読んだ時の自分を思い返すのもいいでしょう。
また、文芸ジャーナリズムの現場を伝えるという五木氏の思いを受けて、<1冊の本ができるまで>というコーナーが設けられています。
登場人物のアイデアメモ、生原稿、ゲラ、出版社からのFAXといった書籍の制作過程が分かる資料が展示されています。担当編集者からのFAXに記されたメッセージは、実に興味深いものです。
また、生原稿では「新聞社前のビル」が「ニューグランドホテル」に修正されているなど、ファンならずとも興味深い展示となっています。

五木寛之氏の略歴
五木寛之氏は1932年(昭和7年)に福岡県で生まれました。高校卒業後に上京し、作詞家・放送作家として活躍した他、レコード会社の専属作詞家として数々の楽曲を送り出しました。
1965年に金沢出身の女性と結婚します。奥様の父親は、当時の石川1区選出の衆議院議員で後の金沢市長となった岡良一氏でした。岡市長の頃の私は小学生でしたが、革新系の市長として絶大な支持を得ていた記憶があります。
泉鏡花文学賞は岡氏の在任中の1973年(昭和48年)に制定され、五木寛之氏は第1回から現在まで選考委員を務めています。
さて、結婚後の五木氏はマスメディアの世界から距離を置き、夫人の故郷の金沢で暮らし始めます。ご本人のエッセーによると、今では寺院群として金沢の観光地のひとつとなった小立野(こだつの)に居を構えたそうです。
金沢の地で小説の執筆活動を開始し、1967年(昭和42年)に『蒼ざめた馬を見よ』で第56回直木賞を受賞。
その後も『青春の門』『四季・奈津子』『親鸞』をはじめとする数々のベストセラー作を発表するなど、日本を代表する作家のひとりとして現在も活躍されています。
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ミュージアムというよりもサロン
五木寛之氏が金沢文芸館の方向性を、「伝統を守る博物館ではなく、新しい文芸の波を作り出すホームグラウンド」とイメージしたとおり、館内には人と人との触れ合いが見られます。
1階の「交流サロン」には落ち着いた色合いのテーブルと椅子が置かれ、文芸ファン同士が語り合うサロンのような雰囲気を醸し出しています。
3階には小さな図書室のような「文芸フロア」があり、泉鏡花文学賞の受賞作が紹介されている他、金沢の三文豪の徳田秋聲、泉鏡花、室生犀星をはじめ、五木寛之氏や唯川恵さんなどの金沢ゆかりの作家の作品が並んでいます。
また、ここにもシックな感じのテーブルと椅子が用意され、所蔵されている書籍を読むことができます。「文芸フロア」では説明役のボランティアの方がフレンドリーに話しかけてくれます。
ミュージアムでは、係員が話しかけてくると、多くの場合は邪魔しないでくださいという感じになるのですが、小説の好きな人が訪れる文芸館では、来館者と説明係の人とが文芸談議に花を咲かせています。
説明係の人も文芸ファンということもあって丁寧に詳しく説明してくれますので、何か知りたいことがありましたら、気軽に質問してみるといいでしょう。
金沢文芸館の観覧料は100円で高校生以下は無料です。開館時間は午前10時から午後6時(入館は午後5時30分)までで、火曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始が休館日となります。
なお、写真撮影については2階の五木寛之文庫は撮影禁止ですが、1階と3階は撮影okです。

かなざわぶんげいかん
住所:金沢市尾張町1-7-10
TEL:076-263-2444
料金:一般 100円、高校生以下 無料
時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館:毎週火曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
撮影:1階と3階の展示室は撮影OK。2階の五木寛之文庫は撮影NG
金沢文芸館ホームページ
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