shuseimuseum

Tokuda-Shusei-Museum
(Museum vol.11

ひがし茶屋街の近くにある上品な記念館

金沢には明治から昭和にかけて活躍した三文豪と言われる作家がいます。泉鏡花、室生犀星、徳田秋聲です。市内には三文豪の記念館がそれぞれ設けられています。

3人の中で泉鏡花と徳田秋聲はいずれも浅野川流域で育ち、同じ小学校に通いました。学年は秋聲がひとつ上でしたが、色々な資料を紐解くとお互いに顔は知っていたようです。この2人は後に東京で尾崎紅葉の門下生となります。

徳田秋聲記念館があるのは、浅野川にかかる梅ノ橋のひがし茶屋街寄りの袂です。泉鏡花記念館とは浅野川大橋を挟んでちょうど対角線上に位置します。梅ノ橋は浅野川大橋のひとつ上流の橋で、秋聲のみち鏡花のみちを結んでいます。

鏡花のみちから秋聲のみちに向かって梅ノ橋を歩いていると、右手にベージュに彩られ、黒い屋根瓦が敷かれた2階建ての建物が見えてきます。それが徳田秋聲記念館です。

土塀の門を抜け敷地内に入ると、右手に展望デッキが設けられています。展望デッキからは女川と称される浅野川のゆったりとした流れを眺めることができ、さらに展望デッキから河原へと降りることができます。

展望デッキから浅野川の流れが一望できます

展望デッキから浅野川の流れが一望できます

稀代の恋愛小説家・徳田秋聲

徳田秋聲は1873年(明治4年)に金沢で生まれました。生家は元士族でしたが、明治維新の混乱期の中で徳田家は職を失い、現在のひがし茶屋街のすぐ傍に移り住みます。

秋聲は子供の頃からご近所のひがし茶屋街が遊び場のひとつでした。

現在のひがし茶屋街は観光地化されていますが、当時は東の廓(くるわ)と呼ばれた花街で、当然のことながら、少年の耳には旦那衆と芸妓さんとの色恋沙汰の噂が聞こえてきたことでしょう。

秋聲は泉鏡花の紹介で尾崎紅葉の門下生となり本格的な作家活動に入ります。そして『黴』で人気作家としての地位を確立し、男女の恋愛をテーマに、微妙に揺れ動く男と女の心情を表現していきました。

1939年(昭和14年)に『仮装人物』で第一回の菊池寛賞を受賞しました。同賞の受賞者には現在も正賞として懐中時計が贈られていますが、これは受賞当時に賞品は何がいいかと聞かれた秋聲が、懐中時計を希望したことにちなんで続けられているものです。

清潔感を感じる1階ロビー

清潔感を感じる1階ロビー

工夫が凝らされた展示から伝わる関係者の思い

金沢の三文豪の中で、室生犀星は国語の教科書に載っていますし、泉鏡花については泉鏡花文学賞のニュースが毎年秋に報じられることから、犀星と鏡花については金沢の人たちの間でも知られているのですが、徳田秋聲は残念ながら最も知名度が低いのが現実です。

自然主義文学である秋聲の恋愛小説は、男と女のありのままの感情を素直に表現するもので、通俗小説ともいえるカテゴリーであることから教科書に載るのはまず無理です。

また、恋愛小説は流行りモノということもあってか、一般の書店では秋聲の作品はほとんど売られていません。

このことから秋聲に接する機会がないのです。そのことを秋聲記念館の人たちもよくご存知なのでしょう。三文豪の記念館で最もディスプレイに工夫が凝らされています。

中でも秋聲の代表作から5人の女性主人公にスポットをあて、和紙人形で再現するとともに映像で紹介する「秋聲が描いた五人の女性たち」のアトラクションは、秋聲を知らない人にも「読んでみたい」と思わせるものです。

この他、ミュージアムショップでは、秋聲記念館が昔の文体を現代表記に改めた自社出版の文庫本が販売されています。私も記念館で購入した『黴』ではじめて秋聲の世界に触れました。

ノーベル賞作家の故川端康成氏は、1947年(昭和22年)の秋聲文学碑除幕式の前夜に行なわれた記念講演で、秋聲について次のように述べています。

「日本の小説は
源氏にはじまって西鶴に飛び、
西鶴から秋聲に飛ぶ。」

今では古典となっている源氏も西鶴も、世に出た当初はセンセーショナルな話題を引き起こしたことでしょう。秋聲が再評価されるのはもう少し先のことなのかもしれませんね。

徳田秋聲記念館の観覧料は一般・大学生が300円、65歳以上が200円で高校生以下は無料で、年末年始と展示替えの期間は休館です。

なお、写真撮影については展示室での撮影は禁止で、受付け脇の休憩スペースのみ許可されています。

浅野川大橋から徳田秋聲記念館への途中にあります

浅野川大橋から徳田秋聲記念館への途中にあります

徳田秋聲記念館ホームページ


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