金沢旅行の予備知識#6
日本海側に位置する加賀百万石の城下町・金沢は、江戸時代から太平洋側の人々にとっては行きにくい場所でした。逆の見方をすると、金沢で暮らす人たちも太平洋側に出るのはひと苦労でした。そのことから、独自の文化が育まれてきました。
はじめて金沢を訪れる方は、受け継がれてきた文化や街並みを楽しまれる一方で、太平洋側とは違う価値観があることに戸惑われることも多いようです。
他の都市と同様に、金沢にも良い点があれば悪い点もあります。私は県外からのお客様をご案内することがありますが、お客様が戸惑われたり怪訝な表情をされた時に必ず伝える言葉があります。その言葉とは「金沢は職人の街だから」です。
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職人の街だから他都市と同じは嫌
藩政期に加賀藩主だった前田家は、百万石の潤沢な資金を軍備に使わずに文化に使いました。どのような形で文化にお金を使ったのかと言いますと、京の都から高名な職人をヘッドハンティングして金沢に招いたのです。
そして、金沢城の近くに屋敷を与え創作活動を支えるとともに、招いた職人の技術を地元の職人に伝承していったことで、金沢は「職人の街」になりました。
一般的な職人に対するイメージとは、愛想がなく、こだわりが強く、自分だけの「一点もの」にプライドを持つ人なのではないでしょうか。
金沢の人はよその街と同じことをするのを嫌います。自分たちの街だけのものを作りたがります。一点ものじゃないと嫌なんです。だからこそ、金沢駅の鼓門、金沢21世紀美術館、鈴木大拙館などの建造物を世に送り出したのです。
尾山神社の神門は一点もの
前田利家と正室のおまつの方を祀り、金沢で最も初詣客の多い尾山神社も「一点もの」と言える作品です。1873年(明治6年)に創建された当初、期待に反して全く参拝者が来なかったことから、人寄せのために奇抜なデザインの神門が作られました。
西洋風とも中国風とも形容される建物の3階部分には色付きガラスがはめ込まれており、若い人たちの間で「ステンドグラスの神社」として知られるようになりました。
日本庭園や茶屋街にも一点もの
21世紀の金沢観光のツートップを担う兼六園とひがし茶屋街では、兼六園の「雪吊り」と、ひがし茶屋街の「金箔」が、まさに一点ものと言えます。雪吊りも金箔も、他の都市ではなかなか真似できないですよね。
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職人の街は商売がヘタクソ
職人の街・金沢は商売がヘタクソです。石川県外からお越しになった方が驚くほど接客に難ありです。ファストフードでもコンビニでも店員さんに笑顔はありません。もっと楽しく仕事をすればいいのに、つまらなそうに仕事をしています。
さすがに、観光客とのやりとりがメインのひがし茶屋街では、北陸新幹線の開業以降は少しずつ対応が良くなってきましたが、それでも、観光で訪れる方から見ると「この対応は何なの!?」と感じこともあるかと思います。
聞かれることに慣れていない
金沢の接客のウイークポイントは、質問されることを怖がっていることです。金沢の子供たちは学校の授業で質問することは滅多にありません。質問した経験がないので、何かを尋ねられた時に、どう答えれば相手が満足するかが分からないのです。
接客のまずさも “職人の街” だからと言えます。店員は心の中で「良いと思えば買えばいいし、良くないと思えば買わなきゃいいでしょ」と思っているのでしょうね。もし、金沢での顧客対応で不愉快なことがありましたら、遠慮なく指摘してください。
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無料ゾーンが多いのが長所です
これから金沢を訪れようとお考えの方に嬉しいことをひとつお伝えしましょう。それは、金沢の文化施設では無料ゾーンが多いことです。他の都市では有料になりそうなエリアでも、金沢では無料開放されています。
金沢城公園は五十間長屋以外は入園無料ですし、金沢21世紀美術館も館内に入るだけなら無料です。また、鈴木大拙館では人気の「水鏡の庭」が無料ゾーンからも見られます。兼六園は有料ですが、一般320円と格安ですし65歳以上は無料です。
職人は作品を見てもらうのが一番
なぜ無料ゾーンが多いのかと言いますと、金沢の文化施設は、元々が、観光目的で作られたのではなく市民のために作られたからです。例えば、全国的に知られる金沢21世紀美術館も、市民にアートに親しんでもらうために作られた美術館です。
もう一つの理由としては、やはり職人の街だから無料ゾーンを多くすることに抵抗がないのでしょう。職人というのは、まずは自分の作品を多くの人に見てもらいたいものですよね。良くも悪くも、金沢は職人の街です。
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