金沢の旧家庭園#4
日本の城下町には、藩政期にその土地の持ち主であった藩士の名前が町名になっている例が多く見られますが、金沢でも大名並みの5万石の禄高を誇った筆頭家老・本多家の所領地が、本多町という町名で残っています。
現代の金沢では、兼六園から金沢21世紀美術館の方向に延びる通りは本多通りと名付けられています。そして、本多通りに面する北陸放送(MRO)の裏手に、かつての本多家の庭園があります。
それが松風閣庭園です。MROの社屋を通り抜けることができないことから、鈴木大拙館との連絡口から入園することになります。なお、入園は無料です。
▼
薄暗い苔地では飛び石を歩きます
松風閣庭園は藩政期の初期に造られた庭園です。現在の松風閣庭園の場所は、藩政期には本多家の下屋敷があった場所で、上屋敷にあった庭園をこの場所に移築しました。
2000坪の敷地を持つ園内では、池の周囲を大きな木が取り囲み、昼間でも日影が多くなっています。薄暗い散策ルートには歩行者用の飛び石が置かれていますが、これは日影で生育する苔を守るための処置で、入園者は飛び石の上を歩きます。
木々に覆われている薄暗い散策ルートから池の対岸を見渡すと太陽が燦々と降り注いでおり、明と暗のコントラストが心に静寂をもたらしてくれます。特に鈴木大拙館の「水鏡の庭」を見た後に訪れると、日本庭園の持つ神秘性を感じます。
▼
兼六園作庭の参考とされた庭園
兼六園と同じように、松風閣庭園の池には霞ヶ池、浮島には蓬莱島という名前が付けられています。
本多家が兼六園の池と浮島の名前を拝借したのかなと思っていたのですが、金沢市のホームページを見ると、兼六園よりも先に松風閣庭園が作庭されており、兼六園自体が松風閣を参考として造られた庭園だということです。
このページのタイトルに「ミニ兼六園」と記しましたが、正確には「元祖兼六園」と言えるでしょう。
散策ルートの途中には陶芸工房があります。この工房は『北陶』という陶芸の会社の工房で、工房の代表である飯田雪峰氏は金沢市の文化活動賞を受賞している著名な陶芸家です。この工房では一般の人たちを対象に陶芸教室を開催しています。
▼
北陸放送(MRO)の姿勢は大いに疑問
松風閣庭園は、1968年(昭和43年)に個人の所有からMROの所有となった後も、一般市民の目に触れることはありませんでした。庭園が一般公開されるようになったのは鈴木大拙館がオープンした2011年のことです。
このことから、金沢の人たちの中には松風閣庭園を見たことがないという人が大勢います。
調べてみると、文化庁の指示により開園しないようにとの通達があった時期もあったそうです。しかしながら、ジャーナリズムを標榜する企業がこのような名所を公開してこなかったのは驚きです。
現在、MRO前の本多通りから松風閣庭園へ通り抜けることはできません。
鈴木大拙館から入園して行き止まりまで行くと、歩いてきた道を戻らなければなりません。庭園からは、すぐそこに本多通りを走る車が見えているにもかかわらず、通り抜けすることができないのです。これはとても不便です。
鈴木大拙館自体が地元の人でも少しわかりにくい場所に位置していますので、MRO内を通り抜けることができれば観光で訪れる方にも好都合のはずです。
そうなれば、松風閣庭園~鈴木大拙館~金沢市立中村記念美術館という緑の癒しルートが出来上がることになります。
通り抜けできる施設も
主計町茶屋街の近くに金沢美術工芸大学の柳宗理記念デザイン研究所という施設があります。この施設は尾張町大通りと泉鏡花記念館の間に位置しています。つまり建物内のロビーを通り抜けると泉鏡花記念館への近道になるのです。
同研究所は通り抜けしようとする人たちを拒むことなく、ロビーに「こちらから、泉鏡花記念館へ通り抜けいただけます。」という案内をしています。このような姿勢が、企業としてのあるべき姿なのではないでしょうか。
北陸放送(MRO)には本多通りと松風閣庭園の通り抜けを認めることを求めます。
利用案内
松風閣庭園
しょうふうかくていえん
住所:金沢市本多町3-2-1
料金:無料
撮影:OK
●
松風閣庭園の周辺スポット
金沢の地図が表示されない時は「リロード↺」
❶鈴木大拙館 | ❷美術の小径・緑の小径 | ❸中村記念美術館 | ❹石川県立美術館 | ❺金沢神社 | ❻兼六園 | ❼金沢21世紀美術館 | ❽石浦神社
NEXT - 辻家庭園-寺町寺院群にある明治時代の迎賓館
観光名所の周辺は文化エリア
旧家庭園 -5選-
・金沢の旧家庭園(まとめ)
・寺島蔵人邸-現代に残る加賀藩の中級武士の屋敷
・武家屋敷跡 野村家-屋敷の庭はミシュラン2つ星
・西田家庭園玉泉園-千仙叟宗室の茶室で抹茶休憩を
・松風閣庭園-金沢の人も知らなかったミニ兼六園
・辻家庭園-寺町寺院群にある明治時代の迎賓館
美術館・記念館 -20選-
国立工芸館 | 石川県立美術館 | いしかわ生活工芸ミュージアム | いしかわ赤レンガミュージアム | 石川四高記念文化交流館 | 鈴木大拙館 | 金沢市立中村記念美術館 | 金沢ふるさと偉人館 | 金沢能楽美術館 | 金沢くらしの博物館 | 金沢市立安江金箔工芸館 | 徳田秋聲記念館 | 泉鏡花記念館 | 金沢蓄音器館 | 金沢文芸館-五木寛之文庫- | 大樋美術館 | 前田土佐守家資料館 | 金沢市老舗記念館 | 室生犀星記念館 | 金沢建築館
神社仏閣 -4選-
主要な観光名所は8つ+金沢駅
金沢駅 | 兼六園 | 金沢城公園 | ひがし茶屋街 | にし茶屋街 | 主計町茶屋街 | 長町武家屋敷跡 | 金沢21世紀美術館 | 近江町市場
▼