金沢の強みは「城下町なのにお城が主役ではない」

金沢旅行の予備知識#2

全国的なインバウンドの流れの中で、金沢でも外国人観光客が飛躍的に増えました。金沢は “加賀百万石の城下町” と形容され、江戸時代の初期から存在した古い街ですが、観光地として大きく発展したのは21世紀に入ってからです。

まず、2001年3月に金沢城公園の「菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓」が復元されました。

同年11月には「東山ひがし」が国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定され、ひがし茶屋街と名前を変えて観光スポットへと舵を切りました。花街が重伝建に指定されたのは、京都の祇園に次いで2例目のことでした。

ひがし茶屋街



金沢駅のリニューアルは2005年

全国でも有数の人気ミュージアムとなった金沢21世紀美術館のオープンは2004年10月で、翌2005年3月には金沢駅の東口に「鼓門」と「もてなしドーム」がお披露目されました。

そして、鼓門の竣工からちょうど10年後の2015年3月に北陸新幹線が開通しました。

金沢駅

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城下町なのにお城が主役ではありません

金沢の強みは、城下町であるにもかかわらず「金沢城」が観光の主役ではないことです。

現在の金沢では、兼六園とひがし茶屋街が観光名所のツートップで、その後に金沢21世紀美術館と近江町市場が続きます。ここまでが第1グループで、金沢城公園は、現代の金沢観光では第2グループに位置付けられています。

藩政期に藩主・前田家の居城であった金沢城公園は、明治時代から先の戦争までは帝国陸軍が管轄し、戦後は1994年まで金沢大学のキャンパスが置かれていました。前述のとおり、金沢城のシンボル・五十間長屋が復元されたのは2001年のことです。

このことから、かつて大学の校舎やグラウンドがあった場所の多くが、二の丸広場、三の丸広場、新丸広場などと名付けられた空き地となっています。

二の丸広場

お城は一度訪れれば十分です

実際に観光客の方からは「金沢城って空き地ばかりね」と言われることもあります。

金沢城が金沢観光の主役であれば反論したくもなることでしょう。でも、お城が街の主役ではないことに安心感があるのか、金沢の人たちも「本当に何もなくてお恥ずかしいです」と返答します。

他の城下町の方には申し訳ないのですが、お城マニア以外の方にとっては、お城とは一度だけ訪れれば十分な場所です。なぜなら、10年後も20年後も同じだからです。お城以外の観光スポットで勝負できるのが金沢の強みです。

二の丸広場から眺める新丸広場

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かつては世界で2つの「お城の大学」

1994年に郊外へ移転するまで、金沢大学のキャンパスは金沢城内に置かれていました。兼六園と直結する石川門が校門で、当時はドイツのハイデルベルク大学とともに世界で2つだけの「お城の大学」がセールスポイントでした。

私は、小学校の頃に一度だけ石川門の奥に入ったことがありました。3年生の時の担任だった金沢大学を卒業したばかりの女性の先生が、今日はみんなをお城の中に連れて行ってあげようと言って、大学の構内を見学させてくれたのです。

当時の私は、金沢大学ってどんなに素晴らしいのだろうと思いワクワクしながらお城の中に入ったのですが、どこにでもあるような、ごく普通の校舎が並んでいてガッカリしたのを憶えています。

極楽橋と三十間長屋(二の丸広場から)

大学が置かれて良かったのかも

金沢城に大学が置かれていた頃は、重要文化財の三十間長屋を、入学試験で合格した学生しか見れないことに疑問を抱いた人もいたことでしょう。しかし、今にして思うと、1990年代まで手付かずのままだったことは幸運でした。

1980年代後半のバブル景気が崩壊して、日本人の中に本物志向の意識が醸成されてきた時代に石川県の所有となったことで、金沢城は歴史を忠実に再現するお城として高い評価を受けるようになりました。

もし、戦後すぐに金沢城が一般公開されていたら、石川県では観光対策として史実を無視してでも復元したかもしれません。もしかすると、コンクリート造りにしたかもしれませんし、資料が残っていない天守閣すらも建てたかもしれませんね。

加賀百万石の城下町なのに、金沢城に一点張りすることなく街づくりを進めざるを得なかったことが、結果的に良かったように思えます。

五十間長屋(鶴の丸休憩館から撮影)

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金沢観光ガイド 南 武志

観光客の方が「ひがし茶屋街」の最寄りのバス停に並ばれているのを見て、兼六園も近江町市場も歩いて10分なのに…と思ったことが、このサイトをはじめたキッカケでした。 金沢の街は歩いて回れます。自分だけの観光プランで城下町・金沢を満喫してください。

2018年12月4日