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芸妓さんなどの伝統芸能を地元経済人が支援

2022年2月24日

2022年2月22日付の北國新聞に、ひがし、にし、主計町の三茶屋街の芸妓さんや、地元を拠点とする邦楽舞踊家などの金沢が誇る伝統芸能を次代につなぐため、地元の経済界が結束して支援するという記事が掲載されていました。

支援のスキームは、金沢商工会議所と金沢経済同友会、(一社)石川県芸術文化協会が連携して発足する「金沢伝統芸能継承支援経済人会議」(仮称)が、企業や個人に協力を呼びかけるものです。

金沢には市指定文化財の「金沢素囃子」をはじめ、日本舞踊、長唄、小唄、哥澤(うたざわ)、筝曲、笛などの芸が受け継がれています。新組織では、伝統芸能を守り、育てるための経済支援や情報発信を行います。

3月以降に金沢商工会議所、金沢経済同友会の会員企業や個人の会員を募り、6月下旬から7月上旬に組織を立ち上げ、具体的な支援内容や予算を決めるとのことです。

金沢商工会議所



コロナ禍で芸妓さんが減少

ひがし茶屋街にし茶屋街主計町茶屋街の三茶屋街の芸妓さんたちは、2015年の北陸新幹線の開業以降、金沢の「顔」となって文化を発信してきました。

2004年に始まった「金沢おどり」をきっかけに新花さんの誕生も相次ぎ、2017年には三茶屋街の芸妓は計46人に達しました。しかし、コロナ禍でお座敷が激減し、現在は33人にまで減少しています。

北國新聞の記事によると、芸を指導する邦楽舞踊の師匠も苦境に陥っているそうです。

時代の変化とともに稽古事を嗜む人が減り、後継者不足に直面しています。また、コロナ禍で発表の場が中止や延期となる厳しい状況にあり、金沢の看板である「芸ごと」をより手厚く支援する必要性が指摘されていました。

現在、茶屋街の芸妓さんには石川県、金沢市の奨励金に加え、金沢伝統産業振興協同組合が、石川県と金沢市などが出資した石川県文化・産業振興基金を原資に奨励金を渡しています。

ひがし茶屋街

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芸妓さんの減少は危機的状況

私は個人的に、金沢の花柳界は曲がり角に差し掛かっていると思っています。

戦後、衰退の一途を辿っていた金沢の花柳界が、新幹線の開業後に続々と新花さんがお披露目され、一旦は息を吹き返したかと思えたところに、コロナ禍によって固まり切っていなかった外壁が剥がれたと見るのが正確なところです。

当サイトで以前にも指摘しましたが、コロナ以前から、金沢では新花さんの早期引退が目立っていました。そこに、熟練の技能を持つベテランの芸妓さんの死去や引退が重なり、一気に芸妓さんの人数が減少しました。

にし茶屋街のお稽古場(西検番事務所)

かつては大旦那が支えた金沢の花柳界

金沢の茶屋街は、明治期から昭和初期にかけて大旦那と呼ばれる富豪が支えてきました。有名なのは明治時代に尾小屋鉱山の経営で財を成した横山男爵で、一時期は「東の廓」の支払いの大部分を横山家が担っていたそうです。

現在の金沢には大旦那はいません。例えば、長崎における高田明氏は現代の大旦那と言えるでしょう。個人の財力で地元のサッカーチームを復活させました。金沢にはそのような人物がいないのです。

今回の支援策は、自治体ではなく、小旦那が結集して地元の伝統芸能を支えるスキームです。少しでも伝統芸能の継承に役立ってもらえればいいですね。

主計町事務所と暗がり坂

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自治体から芸妓へのコロナ支援金に大反発

金沢が最初のコロナ禍に見舞われた2年前の春に、石川県と金沢市が芸妓さんへの支援金を出しました。私は率直に「地元の自治体が芸妓さんを支援するのは良いことだ」と思いましたが、意外にも、市民から大反発を受けました。

SNSでは「私も苦しいのに何で芸妓だけに金を出すんだ」「普段はお高く留まっている芸妓が苦しくなったら市や県に助けてもらうのか」といったコメントが見られました。確かに、芸妓さんは市民の日常生活からは遠い存在です。

今回、民間企業や個人が芸妓さんを支援することとした背景には、2年前の大反発があったのかもしれませんね。

ひがし茶屋街のお稽古場(東料亭組合)

今も庶民からは遠い存在

私は金沢で生まれ育って、金沢の高校から東京の大学に進学し、30年間東京で暮らして帰ってきました。高校時代の私は、毎日、今のひがし茶屋街に近い浅野川大橋を渡っていましたが、近くに花街があることを知りませんでした。

今にして思うと勿体ないことをしたものですが、当時は、東の廓 (くるわ)の近所の子供たちは「廓に入っちゃいけないよ」と教えられたと聞きます。ひがし茶屋街という人気スポットになった現在も、芸妓という職業への偏見が残っているようです。

市民の偏見を打破するためには、芸妓さんの方から市民に近づいていかなければならないでしょう。大旦那のいない金沢では、支援金だけで芸妓さんの生活を支えるには限界があります。今こそ、一言さんお断りの慣習を撤廃する時です。

にし茶屋街

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主要な観光名所は8つ+金沢駅



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金沢で主要な観光名所は1日で回れます。なぜなら、人気スポットが東京ディズニーランドと同じくらいのエリアに集っているからです。とりあえず見た!という感じでよろしければ、1日あれば充分です。

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金沢では、1周約4.3kmの百万石通りが観光エリアです。金沢城公園~兼六園~21世紀美術館は隣接し、ひがし茶屋街と主計町は隣町です。近江町市場や長町武家屋敷跡へもご近所へ行くような感覚です。

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バス移動では北陸鉄道バスの「1日フリー乗車券」をお買い求めください。料金は800円です。路線バスの210円区間と金沢周遊バスを購入日に何度でも利用できます。ほとんどの観光名所がカバーできます。

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金沢駅は観光名所が集まる中心部から少し離れています。1泊の場合は駅チカの方が安心できるかと思いますが、2泊以上の場合は香林坊、片町、武蔵ヶ辻などの繁華街に宿泊する方が圧倒的に便利です。

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金沢観光ガイド 南 武志

観光客の方が「ひがし茶屋街」の最寄りのバス停に並ばれているのを見て、兼六園も近江町市場も歩いて10分なのに…と思ったことが、このサイトをはじめたキッカケでした。 金沢の街は歩いて回れます。自分だけの観光プランで城下町・金沢を満喫してください。

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