能登半島地震から2週間。金沢の観光エリアは、今「セカンドコロナ」とも言える状態です。兼六園にも、ひがし茶屋街にも、近江町市場にも観光客の姿はまばらで、行列ができる人気の飲食店で待ち時間ゼロのこともあります。
宿泊施設については、マスメディアの取材クルー、医療関係者、復旧に携わる工事関係者の宿泊所として予約が入っているようですが、観光エリアの飲食店や工芸品店、和菓子屋さんや着物レンタル店はコロナ禍の時のような静けさです。
SNSには、馳知事が「石川県に来るな」と言ったから観光客が激減したという事実誤認の投稿も見られますが、今の金沢が閑散としているのは誰のせいでもありません。被災地に行くのを躊躇するのは人として普通の感情です。
東日本大震災の直後に東京に行くのは怖かったですよね。それと同じです。金沢でも身体に感じる揺れが続いているのは事実ですし、また大きな揺れが来る可能性もあるのですから、キャンセルが出るのは当然のことです。
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今は待つしかない時
SNSには、一般ユーザーからの「金沢は被害が少ないので来てください」という主旨の投稿が目立ちますが、観光業界では声を上げるのを控えているように思えます。
セカンドコロナに陥っている当事者が平静なのは金沢らしいですね。職人の街・金沢は目先のお金を追いかけてはいけません。職人が目先のお金にこだわると、商人が同様のことをするよりも遥かにいやらしく見えてしまいます。
私は毎日街中に出ているわけではありませんが、ほんの少しだけ、ひがし茶屋街に人通りが戻ってきているように見えます。正確な見方をすると、金沢旅行をキャンセルする人が減ってきているように思えます。
金沢のホテルの状況は?
今、金沢ではホテルが取れないという報道を目にします。半分は本当で、半分は大げさです。1月中は満室状態というホテルが多いのは事実ですが、根気よく探すと空いているホテルもあります。
全体的な傾向を言いますと、1泊2万円以上のデラックスなお部屋の方が空いていますし、“金沢 ホテル”でグーグル検索した時に後ろの方に出てくるホテルの方が空いています。また、2月以降は予約できるお部屋が多くなっています。
大地震から2週間、金沢のホテル・旅館は、能登半島からの被災者を受け入れる2次避難所としての役割と、能登半島のインフラ復旧に携わる工事関係者の前線基地という2つの役割を担っています。
もちろん、以前から予約されていた方におかれましては、キャンセルせずに来ていただけるようでしたら、どうぞ金沢をお楽しみください。1月15日現在、余震は少なくなっています。
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自然は何が起きるか分からない
大地震から2週間しか経っていないのに「金沢は大丈夫だから観光に来てください」と言えるものではありません。能登半島では肉親を失い、自宅を失った多くの方が劣悪な環境の中で頑張っているのですから。
何よりも、このまま地震活動が収まると保証されているわけではありませんので、旅行者のリスクを考えると、今はまだお客様を積極的に呼ぶ時期ではありません。
2016年の熊本地震では震度7の揺れが2度発生しました。1度目の震度7の後、震源地に近い旅館を予約していたご夫婦が、今、現地では風評被害で大変だろうから、私たちだけでも行ってあげようとの気持ちからキャンセルせずに宿泊しました。
そして、宿泊した夜に2度目の震度7の地震に見舞われ、尊い命を落とされました。人として思いやりのある優しい気持ちが命を奪うこととなってしまいました。
日常生活がある金沢は冷静に
セカンドコロナ状態の今、金沢がやるべきことは観光PRではありません。能登半島から二次避難所に避難してくる被災者を温かく迎えることです。また、人命救助や復旧工事に尽力してくれる全国の支援者を感謝の気持ちで迎えることです。
SNSを見ていると、馳知事の発言を曲解する人がいたり、その投稿に激しく反論する人がいたり、一般ユーザーからの「金沢に来てください」という投稿に対して罵倒するコメントも見られるなど、感情的になっている人が散見されます。
私も観光客のいないひがし茶屋街を見た時は感情的になりましたが、幸いにして金沢には日常生活があります。今は冷静になる時です。
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全国の人が金沢を見ています
大げさに言えば、今、全国の人たちが金沢を見ています。さらに突っ込んで言うと金沢市民の民度を見ています。キャンセルが続出している飲食店や体験施設では、ホテルだけに予約が入っていることに理不尽な感情を抱くかもしれません。
また、当然のことですが、国からの災害支援金や、石川県への義援金は能登半島の被災者に使われるべきものですので、金沢の観光業界は自力でこの難局を乗り切るしかありません。だからと言って、もがいてはいけません。
先日、近江町市場の青果店のおばちゃんに「お客さんいないね」と声をかけたところ、苦笑いを浮かべながら「仕方がない」と返されました。そうですよね。仕方がないですよね。
待ったからこそ今の金沢がある
金沢の人たちは自己主張が苦手です。自己主張をしなかったことで戦後は日本の発展から取り残されていきました。
でも、金沢は注目されていない頃からしっかりと準備はしてきました。2001年に金沢城公園の五十間長屋が復元され、2004年10月に金沢21世紀美術館がオープンし、2005年3月に金沢駅の鼓門&もてなしドームが完成しました。
北陸新幹線の開業は、鼓門のお目見えからちょうど10年後の2015年3月のことです。現在の金沢は厳しい局面を迎えていますが、お客様から見えないところでしっかりと準備をしながら、地震活動が収まるのを待ちましょう。
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