2017.10.2掲載
本日は、2017年10月の時点で、最近の金沢21世紀美術館について私が感じている不満を記します。それは、館内での撮影禁止の展示室が激増したことです。
例えば、21美が所蔵するコレクションを順番に公開・展示していく「コレクション展」では、昨年までは作品の撮影は基本的にokでした。
そして、カメラに×印のついた案内表示ある展示室のみが撮影禁止となっていて、以前は撮影禁止の展示室は、恒久展示作品の「カプーアの部屋」と、あと1室くらいのものでした。
コレクション展の撮影可能な展示室が1室
それが、今年の春以降、ほとんどの展示室が撮影禁止となりました。ちなみに現在行われているコレクション展では、展示室1~6の中で撮影可能なのは展示室4だけで、残りの展示室はすべて撮影禁止です。
また、特別展でも撮影okの展示室は、展示室13のみとなっています。
これまでの「作品の撮影は基本的にはokですが、一部撮影禁止の展示室もあります」というスタンスから、「基本的には作品の撮影は禁止です。しかし、この展示室に限り撮影okです」というスタンスに変わったのです。
現代アートは人が写り込むことで、さらに活き活きとしてくるものです。
例えば、21美で1番人気のある『レアンドロのプール』では、手すりに足をかけたり、水中にいる雰囲気を出すために飛び上がった瞬間にシャッターを切ったりと、作品を見た人たちが思い思いのポーズで撮影しています。
アートと遊びの融合こそが、金沢21世紀美術館の最大のセールスポイントのはずです。
今の21美のスタンスは、何やら、お上が下々の民から “遊び” の要素を奪ってしまったようです。
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見たければ金を払えという傲慢さを感じます
現在開催中の特別展「日々の生活 – 気づきのしるし」では、恒久展示作品の「緑の橋」とジョイントした、建築家の三分一博志さんの「風、水、太陽の社」という素晴らしい作品が公開されています。
この作品は、恒久展示作品「緑の橋」の全面ガラス張りの通路と、「緑の橋」が展示されている光庭に木の回廊を設け、光庭に水を張り、南の島のような華やかさと聖地巡礼を思わせる厳かな雰囲気を演出している作品です。
当然のことながら、この「風、水、太陽の社」も撮影禁止になっています。この作品は21美の公式サイトでもスケッチ画しか掲載されていませんので、現地に行って、1,000円の特別展料金を払った人しか見ることができません。
また、この作品が設置されたことによって、従来は無料ゾーンにあたる「市民ギャラリー 2004.10.09-2005.03.21」への入場が禁止されてしまいました。
私から見ると「見たければ金を払え」と言っているようにしか思えません。
「風、水、太陽の社」の作者である三分一博志さんは建築家です。建築家というのは多くの人の眼を楽しませるアーティストですから、三分一さんの要望で撮影禁止としているとは思えません。
現代アートとは、多くの人がSNSなどを通して作品を共有していくところに意義があるのではないでしょうか。
だからこそ、これまで21美では大多数の作品を撮影可能としてきたのでしょう。また、東京都議会では、21美のように美術館の作品を撮影可能にすべきという質問が出たとも聞きます。
「市民に開かれた公園のような美術館」をコンセプトに設立され、人気美術館となった21美ですが、観覧者を上から目線で見下す、東京の傲慢な美術館と同じレベルに成り下がったと言わざるを得ません。
本年3月の館長交代が要因とも思えてしまう
21美で撮影禁止の展示室が急激に増えたことに関しては、2017年4月1日付で館長が交代したことが要因となっているのではないかと推測したくもなります。
作品の大多数が撮影禁止になったことについては、21美の死活問題です。アート作品を素人に「見せてやっている」という態度に見えることが、とても不快に感じます。
21美では、個々のアーティストに撮影の有無を確認していると回答していますが、現代アートの作家たちが、21美に対して撮影禁止にしてくれと言っているとは思えません。もし作家から要望があるのであれば、もっと以前にほとんどの作品が撮影禁止になっているはずです。
4月に着任した新館長は愛知県美術館で館長を務められていた方です。愛知県美術館では当然のように作品を撮影禁止にしているのかもしれませんが、21美では、観覧者は作品を自由に撮影して、多くの人と現代アートの楽しさを共有してきました。
新しい館長が作品を撮影禁止にするのがあたり前だと思っているのでしたら、早急に辞めてもらいたいものです。
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