金沢の美術館・記念館#19
金沢で生まれた子供たちは、中学から高校にかけての国語の授業で地元の三文豪について学びます。
金沢の三文豪とは室生犀星、泉鏡花、徳田秋聲の3人です。中でも室生犀星は国語の教科書に出ていることもあって、地元では三文豪の中で最も知られている作家です。
室生犀星記念館は、犀星の生家跡に2002年に建てられたモダンな建物で、にし茶屋街からすぐ近くです。ただ、閑静な住宅街に位置していますので、観光客の方には少しわかりにくいかもしれません。
室生犀星記念館の展覧会 11/11~11/15まで展示替えのため休館 |
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入口の横には犀星の筆跡
記念館はガラス張りの現代風の建物で、入口の左手には犀星の作品で最も有名な「ふるさとは遠きにありて思ふもの」の詩が、犀星の筆跡で黄色の布地に印刷されて飾られています。
犀星は小さくて可愛い字を書く人だったようです。筆跡による性格診断ができる人でしたら、犀星は引っ込み思案な人だと言うかもしれませんね。
犀星の趣味は庭づくり
館内に入ると目の前に小さな庭園があります。庭づくりが生涯を通しての趣味であった犀星の意を汲んで、庭園には犀星が実際に使用していた石塔やつくばいが配されています。
犀星の肉声の朗読も
展示室は1階が常設展示で2階が特別展示です。犀星の年表をパネルで説明している他、自筆の原稿や、友人知人にあてた書簡、さらには生前に愛用した家具や小物などが展示されています。
書簡の中には「原稿料をありがとう」という記述も見られます。また、2階では犀星の肉声による詩の朗読を聞くこともできます。
1階のミュージアムショップでは室生犀星ゆかりの書籍や、犀星のネーム入りの小物などを販売しています。
その中で興味深いのは、入口の横に飾られている「ふるさとは遠きにありて思ふもの」の自筆の詩が、原稿用紙に印刷されて販売されていることです。犀星ファンにとっては最高のグッズなのではないでしょうか。
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不遇な環境があの有名な詩を生みました
室生犀星は明治22年(1889年)に現在の「にし茶屋街」の近くで生まれました。
父親が使用人の女性との間に宿した子だったことから、生後すぐに生家から近い雨宝院というお寺に預けられました。そして、雨宝院の住職であった室生真乗と養子縁組を結び、室生姓を名乗ることとなります。
両親の愛情に触れることなく幼年期から少年期を過ごしたことが、犀星の作風に大きな影響を及ぼしたと言われています。ちなみに、犀星という名前はペンネームで、犀川の西に住んでいることにちなんで犀星自らが名付けました。
金沢では授業で習う「小景異情」
犀星の残した詩の中では「小景異情」と題された次の詩が最も有名です。犀星の生い立ちを知ったうえで読むと、この詩を詠んだ時の犀星の心情が分かります。
小景異情
その二
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
さて問題です。犀星はどこでこの詩を詠んだのでしょうか。次の4つの中からお答えください。これは私の高校時代に国語の試験で出た問題です。
- 東京
- 金沢
- 東京から金沢へと向かう列車の中
- 金沢から東京へと向かう列車の中
正解は、2の金沢です。私も地方から東京へ出た経験を持っていますが、地元にいるのが嫌で東京に出て行った人でも、東京で長く暮らしていると故郷が懐かしく感じられるものです。
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住宅街に位置するモダンな建物
入場料は一般が310円、65歳以上が210円、高校生以下が無料で、開館時間は午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分まで)となっています。なお、火曜日 (祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替えの期間は休館です。
写真撮影については、展示室の内部では撮影禁止ですが、展示室以外の室内の風景については撮影することができます。
室生犀星記念館は金沢市の観光エリアからは少し外れていますが、来館者が間断なく訪れています。文学がお好きな方にはぜひ訪れていただきたい記念館です。
利用案内
室生犀星記念館
むろおさいせいきねんかん
住所:金沢市千日町3-22
TEL:076-245-1108
料金:一般 310円、65歳以上 210円、高校生以下 無料
時間:午前9時30分から午後5時(入館は4時30分まで)
休館:火曜日 (祝日の場合は翌平日)、展示替え期間
撮影:展示室の撮影NG
室生犀星記念館ホームページ
最寄りのバス停
・金沢周遊バス、路線バス「片町」徒歩6分
・金沢周遊バス、路線バス「広小路」徒歩7分
最寄りの観光名所
・にし茶屋街から徒歩4~5分
行き方の参考ページ
・にし茶屋街への行き方
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