本多の森-緑のオアシスは森の都の文化エリア

金沢のお散歩コース#10

金沢は自らを “森の都” と称しています。本当に森が多いのかについては人それぞれの感じ方があると思いますが、ここだけは間違いなく “森の都” と言える場所があります。それが本多の森です。

金沢で一番大きな繁華街である香林坊から、兼六園に向かって百万石通りを真っすぐに進み、兼六園に沿って伸びる広坂を上り切ると、木の葉に陽光がまぶしく映える並木道が一直線に続いています。

兼六園が曲線による和の美しさを最大限に表現した庭園なら、本多の森は直線的な感覚の中に伝統を散りばめた緑のオアシスと言えるでしょう。

本多の森は人通りも少なく絶好のお散歩コースです



五万石の家老・本多家の所有地でした

本多の森は、加賀藩の筆頭家老を務めた本多家の上屋敷があった場所です。大名の3分の2が5万石以下だった時代に、本多家は藩士として5万石もの禄高を有し、藩主の前田家から10万坪もの広大な土地を与えられていました。

藩政期に本多家が所有していた地所は、小立野台地の先端部分にあたる高台と断崖の下に広がる平地部分で、高台には本多家が暮らす上屋敷があり、断崖下の平地には本多家に仕える武士たちの下屋敷がありました。

そして、武士たちは高台にある本多邸に日参していました。なお、上屋敷にあった本多家の庭園は1907年(明治40年)に平地に移築され、現在は松風閣庭園として一般開放されています。

このあたりは出羽町という町名です

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本多の森は金沢の文化エリア

兼六園の先にある本多の森には石川県立美術館、国立工芸館、石川県立歴史博物館、加賀本多博物館、石川県立能楽堂、本多の森ホールという6つの文化施設があります。

まず、広坂を上り切ると右手に見えてくるのが石川県立美術館です。地元では県美と呼ばれ親しまれています。金沢21世紀美術館が現代アートと戯れる新時代の美術館なら、県美は静かに作品を鑑賞する正統派の美術館です。

館内にはパティシエの辻口博啓さんのカフェが併設されています。地元の女性の中には、県立美術館の建物には何度か入ったけど、お目当ては辻口さんのカフェなので展示室には入ったことがないという方が結構います。

石川県立美術館

国立工芸館

県立美術館の先にあるアンティークな建物が国立工芸館です。東京国立近代美術館工芸館が移転してきたもので、日本海側で初めての国立のミュージアムとして2020年10月にオープンしました。ちなみに、名誉館長は中田英寿さんです。

建物は旧陸軍の第九師団司令部庁舎と、陸軍の将校のサロンだった金沢偕行社で、同じ本多の森にある県立能楽堂の敷地から移築されました。

工芸にあまりご興味のない方でも、ちょっと中を見てみようかな思わせるお洒落な外観です。館内に入ってみると、陶芸、漆芸、ガラス工芸、板金などの工芸品が驚くほど斬新なレイアウトで展示されています。

アンティークな外観の国立工芸館

赤レンガミュージアム

広場の向こうに3棟の赤煉瓦の建物が見えてきます。いしかわ赤レンガミュージアムと名付けられた施設で、3棟のうちの2棟が石川県立歴史博物館で、もう1棟が加賀本多博物館となっています。

加賀本多博物館には、この場所に上屋敷を構えていた重臣・本多家の家宝が展示されています。中でも一番の家宝「村雨の壺」は、藩主・前田家からの5万石の加増を辞退した際に拝領した壺で「五万石の壺」と言われています。

アニメ『花の慶次』がお好きな方でしたら、秀吉が百万石の所領を断った慶次に「心して飲め、百万石の酒ぞ」と言う場面をご存知かと思いますが、本多家の「五万石の壺」の話しがヒントになっているのかもしれませんね。

木々の緑が映える赤レンガミュージアム

本多の森の周辺スポット

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開放的な環境で自分だけの時間を満喫

本多の森は人通りが少ないことが特徴です。観光で訪れる方は、限られた時間の中で観光名所から観光名所へと移動していきますので、なかなか本多の森まで足を延ばすことはありません。

また、金沢の地元の人たちにおいては、本多の森はとても綺麗なお散歩コースだということは知っていても、わざわざ広坂を上ってまで本多の森に行こうという人はあまりいません。

別の見方をすると、本多の森は自分だけの時間を楽しむことができる場所だと言えます。

人気観光地のように、人通りが少なくなる瞬間に急いでシャッターを切る必要もありませんし、逆に誰かが写真を撮りたがっているタイミングで、自分が邪魔になっているのではないかと気を遣うこともありません。

自分だけの時間が流れる緑のオアシス

石川県立能楽堂

本多の森には演劇や音楽の会場が2つあります。ひとつが国立工芸館の向かい側にある石川県立能楽堂です。

江戸時代の加賀藩では、藩主・前田家が武家だけではなく町人にも能を奨励したことから、金沢では今も加賀宝生の名で能楽の伝統が受け継がれています。ここは金沢の能楽のメッカです。

石川県立能楽堂

“ホームラン球場” 跡地

石川県立能楽堂の先にあるのが本多の森ホールです。ここは建築家の黒川紀章氏が設計したコンサートホールで、外壁が道路に沿って扇状にカーブしています。

その緩やかな曲線は野球場の外野スタンドの名残りです。50年ほど前まで、この場所には兼六園球場という野球場がありました。

1949年(昭和24年)の読売ジャイアンツと大映スターズの試合では、両チーム合計13本の本塁打が飛び出したこともあって “ホームラン球場” と呼ばれていました。ちなみにこの試合の13本塁打は、今もプロ野球記録として残っています。

時間を気にすることなく、気ままに自分だけの時間を満喫できる場所、それが本多の森です。

本多の森ホール

本多の森の周辺スポット

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観光客の方が「ひがし茶屋街」の最寄りのバス停に並ばれているのを見て、兼六園も近江町市場も歩いて10分なのに…と思ったことが、このサイトをはじめたキッカケでした。 金沢の街は歩いて回れます。自分だけの観光プランで城下町・金沢を満喫してください。

2016年5月21日