2017年2月9日付の北國新聞に、「金沢の茶屋街ピンチ」という見出しで、ひがし、にし、主計町の三茶屋街で、芸妓さんを抱えるお茶屋の存続が危ぶまれているという記事が掲載されていました。
記事によると、お茶屋を切り盛りする女将の多くが70代~80代と高齢化が進む一方で、後継ぎがおらず廃業を考えるお茶屋もあるのだとのこと。
また、記事では北陸新幹線の開業で金沢の花街文化への関心が高まり、新花(新人芸妓)のお披露目が相次ぐなど明るい話題もあるだけに、お茶屋の後継者問題は待ったなしの状況となっていると伝えています。
2016年12月、にし茶屋街の西泉家の女将・まり千代さんが82歳で急逝しました。5月に迎えた新花さんを含め3人の芸妓さんが籍を置いていますが、関係者によると、東京に住む遺族はお茶屋の営業をやめる方向だとのことです。
仮に廃業が決まれば、芸妓さんの受け入れ先や跡地をどうするかという問題が出てきます。
特に新幹線効果で三茶屋街の物件は注目度が高く、県外からの引き合いも多くなっています。にし茶屋街の他のお茶屋の女将からは、仮に西泉家が廃業した場合、「跡地に茶屋街の雰囲気を壊すような店が来てもらっては困る」と懸念する声が聞かれます。
女将の高齢化と後継者不足が深刻に
お茶屋の継承問題に直面するのは、にし茶屋街だけではありません。2016年秋には主計町茶屋街で新花さんら5名の芸妓さんを抱える仲乃家の女将・京子さんが体調を崩して入院し、芸妓さんが女将の代役を務めました。
ひがし茶屋街も含めた三茶屋街には、次世代を担う50代~60代の芸妓さんの層が薄く「もう後がない」と漏らす女将もいます。
「お茶屋を継ぐのは、お金を含め一切を引き受けるということ。並大抵のことではない」と西料亭組合長で明月の女将・乃莉さん(82歳)は継承の難しさを語っています。
女将は店の切り盛りや芸事だけではなく、作法や茶道などにも精通していなければならず、若い芸妓さんを育てる責任もあります。そうした理由もあり、お茶屋の女将は親から引き継ぐケースが多く見られます。
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遊び慣れた旦那衆の減少
主計町茶屋街の一葉の女将・たか子さんは、30年前に母親の跡を継ぐ決意を固め、43歳でお座敷に出ました。
母親を亡くすまでの20年近くで女将の仕事を覚え、継ぐ覚悟もできたそうです。たか子さん自身もお茶屋の今後を考える時期に来ていますが、見通しは立っていません。
「金沢おどりなどで芸妓のなり手が増えているのは嬉しいが、現状では新しい人を引き受けるのが難しい」と苦しい胸の内を明かしています。
ひがし茶屋街では、2012年に71歳で亡くなった山とみの女将・久乃さんの跡を、芸妓の亜希さん(48歳)が継ぎました。
女将の親族でない芸妓さんが引き継ぐケースは珍しく、籍を置いて26年での決断でした。「山とみをなくしたくないというお客様の声に後押しされた。お茶屋がなくなるとまた開くのは大変なので、私がやらないと、と思った」と振り返っています。
近年、芸妓さんがのれん分けで店を出したり、新規に看板を掲げたりするケースもありますが、お茶屋の減少傾向は変わっていません。
30年前には三茶屋街あわせて40軒余りあったお茶屋は、現在、ひがし7軒、にし5軒、主計町4軒の計16軒となっています。
女将らから聞こえてくるのは、ひと昔前とは違い、お茶屋で遊び慣れた旦那衆が減り、宴会後の2次会で訪れる人が少なくなったことを嘆く声です。
記事の最後に「お客様に遊んでいただいてこその茶屋だが、時代は変わった。文化を守るには、芸妓を育てるだけではなく、茶屋の経営そのものを支援する仕組みが必要になってくる」という乃莉さんの談話が紹介されていました。
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