美術館・記念館-topics- 金沢への提言

国立工芸館の独立が待ち遠しい。ぜひ事務所棟も展示室に

2021年9月18日

金沢市は新型コロナの「まん延防止等重点措置」が9月30日まで延長されたのにともない、兼六園金沢21世紀美術館などの文化観光施設の休園・休館も9/30まで延長されました。

観光関連のニュースのない金沢で、国立工芸館に関するニュースがありましたのでご紹介しましょう。



国立工芸館の独立に向け覚書締結

2021年9月10日付の北國新聞によると、国と石川県、金沢市は東京から金沢に移転した国立工芸館の独立に向けて覚書を交わしました。国立工芸館は昨年10月の移転後も東京国立近代美術館の分館に位置付けられており、日本海側で初めての国立美術館として独立が課題となっていました。

覚書には文化庁と国立工芸館を運営する独立行政法人国立美術館が取り組む課題を明記。石川県と金沢市が独立と機能強化を要望していることを受け、工芸館がさらに地域に根付き、日本の工芸の発展を図るうえで必要なあり方を検討するとしました。

また、石川県と金沢市も機能強化に必要な協力を行うことが掲げられました。

谷本石川県知事は「一つの独立した組織として国立工芸館を位置づけさせてもらえれば、価値がより高まり、石川県と金沢市の自治体の格も上がる」と述べ、「一朝一夕にはいかないと思うが、覚書を交わすことで足掛かりができたことに大きな意味がある」と期待しました。

山野金沢市長は「覚書は地方創生の観点から大変意義深い。国立工芸館の機能が強化され、クラフト創造都市として都市のブランド力をさらに向上できるよう、石川県と連携しながら協力していきたい」とコメントを出しました。

覚書の締結を受けて、今後、国と県、金沢市による協議が具体化する見通しです。

本多の森に佇む国立工芸館

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本年4月1日に正式名称変更

独立行政法人国立美術館は4月1日に「東京国立近代美術館工芸館」の名称を「国立工芸館」に改めました。また、運営面では展覧会の企画や予算、人事で本館との調整が不要となるなど、工芸館の独自性が大きく前進しました。

現在、(独)国立美術館には以下の6つの美術館があります。

東京国立近代美術館 (東京)
京都国立近代美術館 (京都)
国立西洋美術館 (東京)
国立国際美術館 (大阪)
国立新美術館 (東京)
国立映画アーカイブ (東京)

この中の国立映画アーカイブは、東京国立近代美術館のフィルムセンターから独立した施設です。同様に金沢に移転した国立工芸館も独立を希望しているものです。ちなみに、金沢の国立工芸館の館長は、親組織の東京国立近代美術館では工芸課長です。

石川県外の方からは、別にどっちでもいいじゃないと言われるかもしれませんね。ただ、プライドが人一倍高い金沢の人にとっては、東京と大阪と京都に肩を並べることで言いようもない優越感に浸れるのです(笑)。

もちろん、私も優越感に浸りたい地元民の一人です。

工芸と現代アートが融合した展示も

想像以上にお洒落な美術館

私も国立工芸館には何度か訪れたことがあります。建物は明治31年(1898年)に竣工した旧陸軍第九師団司令部庁舎と、明治42年(1909年)旧陸軍金沢偕行社が活用され、アンティークな外観が「工芸」の館への期待感を膨らませてくれます。

工芸と聞くと、古臭い陶芸の器ばかりというイメージもあるかもしれませんが、展示作品はガラス工芸、漆工、木工、金工など多岐にわたっています。また、展示室のレイアウトも現代アート美術館のような斬新さを感じます。

私が何よりも驚いたのが作品の写真撮影が認められていることです。隣にある石川県立美術館では展示室内の撮影が禁止されています。全国の他の美術館も展示室内は撮影禁止が普通かと思います。それが国立の美術館で撮影okなのは驚きです。

展示レイアウトも斬新です

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独立を目指すなら事務所棟も展示室に

全般的にとても良いミュージアムだと思うのですが、私には一つ大きな不満があります。それは、2つある建物のうちのひとつが事務所棟となっていて一般の人が入れないことです。事務所として使われているのは金沢偕行社の建物です。

私は国立工芸館がオープンする前、第九師団司令部よりも金沢偕行社の建物に入るのを楽しみにしていたのでかなり落胆しました。初めて国立工芸館に入られる方は、当然のことながら、右と左の両方の建物に入れると思うはずです。

移転後の工芸館の展示室スペースは、片方の建物だけとはいえ東京の頃と比べると多少は大きくなりました。ただ、以前は東京国立近代美術館の分館という位置づけでしたから、小規模スペースでもそれほど問題はなかったでしょう。

石川県と金沢市が本気で東京国立近代美術館からの独立を目指し、工芸専門の美術館を運営するのであれば、両方の建物を展示室にして、工芸王国・石川県では2倍以上の展示スペースを用意しました!とアピールすべきです。

緑のラインの金沢偕行社は事務所棟

第九師団司令部と金沢偕行社の両方の建物が全て展示室となり、2つの建物を結ぶ連絡通路も自由に行き来することができれば、来館者をお腹いっぱいにさせることができるのに…、と思うととても残念です。

とはいえ、事務所棟を新しく作る敷地があるの?という現実的な問題が出てきます。

景観の観点から見ると、現在のレイアウトがベストです。石川県立美術館の先に国立工芸館のアンティークな建物があり、その先には赤レンガミュージアムがあり、本多の森の緑が3つのミュージアムを美しく彩っています。

事務所を作る敷地は十分にあるのですが、事務所棟を建ててしまうと景観が損なわれてしまいます。それでも、多少は景観が損なわれるとしても、私は事務所棟を別に建てて展示スペースを2倍にすべきだと思います。

敷地はたっぷりあるのですが、景観が…

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