金沢の旧家庭園#4
日本の城下町には、藩政期にその土地の持ち主であった藩士の名前が町名になっている例が多く見られますが、金沢でも大名並みの5万石の禄高を誇った筆頭家老・本多家の所領地が、本多町という町名で残っています。
現代の金沢では、兼六園から金沢21世紀美術館の方向に延びる通りは本多通りと名付けられています。そして、本多通りに面する北陸放送(MRO)の裏手に、かつての本多家の庭園があります。
それが松風閣庭園です。MROの社屋を通り抜けることができないことから、鈴木大拙館との連絡口から入園することになります。なお、入園は無料です。
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薄暗い苔地では飛び石を歩きます
松風閣庭園は藩政期の初期に造られた庭園です。現在の松風閣庭園の場所は、藩政期には本多家の下屋敷があった場所で、上屋敷にあった庭園をこの場所に移築しました。
2000坪の敷地を持つ園内では、池の周囲を大きな木が取り囲み、昼間でも日影が多くなっています。薄暗い散策ルートには歩行者用の飛び石が置かれていますが、これは日影で生育する苔を守るための処置で、入園者は飛び石の上を歩きます。
木々に覆われている薄暗い散策ルートから池の対岸を見渡すと太陽が燦々と降り注いでおり、明と暗のコントラストが心に静寂をもたらしてくれます。特に鈴木大拙館の「水鏡の庭」を見た後に訪れると、日本庭園の持つ神秘性を感じます。
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兼六園作庭の参考とされた庭園
兼六園と同じように、松風閣庭園の池には霞ヶ池、浮島には蓬莱島という名前が付けられています。
本多家が兼六園の池と浮島の名前を拝借したのかなと思っていたのですが、金沢市のホームページを見ると、兼六園よりも先に松風閣庭園が作庭されており、兼六園自体が松風閣を参考として造られた庭園だということです。
このページのタイトルに「ミニ兼六園」と記しましたが、正確には「元祖兼六園」と言えるでしょう。
散策ルートの途中には陶芸工房があります。この工房は『北陶』という陶芸の会社の工房で、工房の代表である飯田雪峰氏は金沢市の文化活動賞を受賞している著名な陶芸家です。この工房では一般の人たちを対象に陶芸教室を開催しています。
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北陸放送(MRO)の姿勢は大いに疑問
松風閣庭園は、1968年(昭和43年)に個人の所有からMROの所有となった後も、一般市民の目に触れることはありませんでした。庭園が一般公開されるようになったのは鈴木大拙館がオープンした2011年のことです。
このことから、金沢の人たちの中には松風閣庭園を見たことがないという人が大勢います。
調べてみると、文化庁の指示により開園しないようにとの通達があった時期もあったそうです。しかしながら、ジャーナリズムを標榜する企業がこのような名所を公開してこなかったのは驚きです。
現在、MRO前の本多通りから松風閣庭園へ通り抜けることはできません。
鈴木大拙館から入園して行き止まりまで行くと、歩いてきた道を戻らなければなりません。庭園からは、すぐそこに本多通りを走る車が見えているにもかかわらず、通り抜けすることができないのです。これはとても不便です。
鈴木大拙館自体が地元の人でも少しわかりにくい場所に位置していますので、MRO内を通り抜けることができれば観光で訪れる方にも好都合のはずです。
そうなれば、松風閣庭園~鈴木大拙館~金沢市立中村記念美術館という緑の癒しルートが出来上がることになります。
通り抜けできる施設も
主計町茶屋街の近くに金沢美術工芸大学の柳宗理記念デザイン研究所という施設があります。この施設は尾張町大通りと泉鏡花記念館の間に位置しています。つまり建物内のロビーを通り抜けると泉鏡花記念館への近道になるのです。
同研究所は通り抜けしようとする人たちを拒むことなく、ロビーに「こちらから、泉鏡花記念館へ通り抜けいただけます。」という案内をしています。このような姿勢が、企業としてのあるべき姿なのではないでしょうか。
北陸放送(MRO)には本多通りと松風閣庭園の通り抜けを認めることを求めます。
利用案内
松風閣庭園
しょうふうかくていえん
住所:金沢市本多町3-2-1
料金:無料
撮影:OK
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松風閣庭園の周辺スポット
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