金沢文芸館の見どころ-レトロな文芸サロンと五木寛之文庫

金沢の美術館・記念館#15

ひがし茶屋街から浅野川大橋を渡り真っすぐに行くと、T字路の交差点に、コンクリート造りのアンティークな外観のビルが目に留まります。それが金沢文芸館です。建物は1929年(昭和4年)の竣工です。

旧石川銀行橋場支店の建物を金沢市が買い取ったもので、旧いものがお洒落と言われる時代となった今、このビルは街のランドマークとしての地位を取り戻したようです。

2004年(平成16年)には国の有形文化財に登録され、2005年に金沢文芸館としてオープンしました。

1階の「交流サロン」
金沢文芸館‐五木寛之文庫-の展覧会
・常設展示



五木寛之ファン必見「五木寛之文庫」

入口の脇には青銅版に金文字で「五木寛之文庫」と記されています。金沢文芸館の開設に際して、作家の五木寛之さんがアドバイザーとして協力した際に、3階建ての建物の2階に五木氏のコーナーを作りたいとの依頼を受け併設されたものです。

このことについては、著書の『五木寛之の金沢さんぽ』の中でも触れられています。

五木さんは他の都市からの依頼をすべて断っているので、金沢市からの依頼も最初は辞退しようと思われたのですが「文芸ジャーナリズムの現場を伝えるようなものなら意味のないことではない」と思い承諾したそうです。

文庫本のジャケットはファンの思い出

エレベーターを2階で降りると、左手に五木寛之さんの文庫本ジャケットの陶板がずらりと並んでいます。ファンにとって作品のジャケットは思い入れの強いものです。ゆっくりと眺めながら、愛読当時の自分を思い返すのもいいでしょう。

その他には、名作『青春の門』の生原稿をはじめ、数々の作品のゆかりの品や、金沢で暮らしていた頃の写真が展示されています。

2021年10月のリニューアルオープン以前は、出版社の担当編集者からの「○○の件は□□□□でした」と記された業務連絡のFAX用紙が展示されるなど、出版業界の雰囲気を感じられたのですが、現在は五木寛之記念館のような展示になっています。

ひとつ興味深いのは、五木さんの自作のペンが展示されていることです。五木さんは長時間の執筆でも疲れないように、ゴルフクラブのグリップに巻くテープを、ボールペンに巻いて使用しているそうです。その現物が展示されています。

アンティークな雰囲気の入口

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五木寛之氏の略歴

五木寛之氏は1932年(昭和7年)に福岡県で生まれました。高校卒業後に上京し、作詞家・放送作家として活躍した他、レコード会社の専属作詞家として数々の楽曲を送り出しました。

1965年に金沢出身の女性と結婚します。奥様の五木玲子さんは医師であるとともに版画家としても知られる方で、玲子さんの版画は、五木寛之さんの『私訳 歎異抄(たんにしょう)』をはじめ多くの書籍の表紙を飾っています。

県外の方にお話しすると驚かれるのですが、義父の岡 良一氏は、五木さんの結婚当時、石川1区選出の衆議院議員でした。そして、後に金沢市長となりました。岡市長の頃の私は小学生でしたが、革新系の市長として絶大な支持を得ていました。

娘婿の五木さんが義父の市長から「何か金沢の振興策はないかな」と相談を受けた際に、文学賞の制定を進言したそうです。そのような経緯で1973年(昭和48年)に制定されたのが泉鏡花文学賞です。五木さんは第1回から選考委員を務めています。

3階には泉鏡花文学賞の受賞作の展示コーナー

直木賞受賞の連絡は金沢で

結婚後の五木氏はマスメディアの世界から距離を置き、夫人の故郷の金沢で暮らし始めます。ご本人のエッセーによると、今では寺院群として金沢の観光地のひとつとなった小立野(こだつの)に居を構えたそうです。

金沢の地で小説の執筆活動を開始し、1967年(昭和42年)に『蒼ざめた馬を見よ』で第56回直木賞を受賞しました。ちなみに、受賞の連絡を受けたのは金沢の香林坊にある「純喫茶 ローレンス」でした。

その後も『青春の門』『四季・奈津子』『親鸞』をはじめとする数々のベストセラー作を発表するなど、日本を代表する作家のひとりとして現在も活躍されています。

泉鏡花文学賞の正賞は「八稜鏡」

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ミュージアムというよりもサロン

五木寛之氏が金沢文芸館の方向性を、「伝統を守る博物館ではなく、新しい文芸の波を作り出すホームグラウンド」とイメージしたとおり、館内には人と人との触れ合いが見られます。

1階の「交流サロン」には落ち着いた色合いのテーブルと椅子が置かれ、文芸ファン同士が語り合うサロンのような雰囲気を醸し出しています。

3階には小さな図書室のような「文芸フロア」があり、泉鏡花文学賞の受賞作が紹介されている他、金沢の三文豪の徳田秋聲、泉鏡花、室生犀星をはじめ、五木寛之氏や唯川恵さんなどの金沢ゆかりの作家の作品が並んでいます。

また、ここにもシックな感じのテーブルと椅子が用意され、所蔵されている書籍を読むことができます。「文芸フロア」では説明役のボランティアの方がフレンドリーに話しかけてくれます。

金沢の三文豪の置物

文芸ファンの方は係員と会話を

ミュージアムでは、係員が話しかけてくると、多くの場合は邪魔しないでくださいという感じになるのですが、小説の好きな人が訪れる文芸館では、来館者と説明係の人とが文芸談議に花を咲かせています。

説明係の人も文芸ファンということもあって丁寧に詳しく説明してくれますので、何か知りたいことがありましたら、気軽に質問してみるといいでしょう。

金沢文芸館の観覧料は100円で高校生以下は無料です。開館時間は午前10時から午後6時(入館は午後5時30分)までで、火曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始が休館日となります。

なお、写真撮影については2階の五木寛之文庫は撮影禁止ですが、1階と3階は撮影okです。

3階の「文芸フロア」

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金沢文芸館で五木寛之文庫をリニューアル

利用案内

金沢文芸館
かなざわぶんげいかん
住所:金沢市尾張町1-7-10
TEL076-263-2444
料金:一般 100円、高校生以下 無料
時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館:火曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始
撮影:1階と3階の展示室は撮影OK。2階の五木寛之文庫は撮影NG
金沢文芸館ホームページ

最寄りのバス停
・金沢周遊バス、路線バス「橋場町」徒歩1~3分
最寄りの観光名所
・主計町茶屋街から徒歩2分
行き方の参考ページ
主計町茶屋街への行き方

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2016年5月17日