2026年7月6日付の北國新聞の1面トップは『五木寛之さん原点 -青春の「東山荘」消ゆ-』でした。
東山荘とは、作家の五木寛之さんが30代前半の頃に住まわれていたアパートで、金沢市の小立野 (こだつの) に位置しています。近年、観光スポットとして注目されつつある石川県立図書館へは歩いて10分ほどです。
金沢観光で7月5日の夜に宿泊し、翌朝に北國新聞をご覧になった方は、作家の旧居が取り壊された記事が、社会面ではなく1面のトップになることに驚かれたかもしれませんね。それほどまでに、五木さんは金沢にとっては大切な人なのです。

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五木さんは1965年に入居
記事によると、東山荘が建てられたのは1963年 (昭和38年) で、五木さんは1965年に入居しました。そして、東山荘で小説を書き始めました。当時、中学生だった家主さんの記憶では、五木さんはいつも下駄を履いていた印象があるそうです。
五木さんのエッセー『小立野刑務所裏』を読むと、東山荘に風呂が無かったことから、近くの銭湯「亀湯」に通っていたそうで、きびしい寒気のなかを「わか葉 (おでん屋さん)」に駆けこむ気分は最高だったと記されています。

能登半島地震で損壊
家主さんのコメントによると、今回の取り壊しの要因となったのが、2024年の能登半島地震による建物の損壊でした。外壁が剥がれたことから、万が一にも周囲に危険が及ばないようにと取り壊しを決断しました。
東山荘を訪れて写真撮影をするファンの姿をよく目にしていたことから、解体か、リフォームか、記念館として保存する道も考えましたが、解体を決断したとのことです。

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直木賞受賞のお知らせは金沢で
金沢の人たちは、五木寛之さんを金沢の人だと思っています。実際には、五木さんは福岡県のご出身なのですが、30歳前後の頃に人生に疲れた時期があったそうで、奥様が金沢出身だったこともあって、金沢に移住する決心をしました。
五木さんのエッセー集『五木寛之の金沢さんぽ』では、第1章のタイトルが「もう一つの故郷 (ふるさと)」となっています。このことからも分かるとおり、五木さんご自身にも、金沢への思い入れがあるようです。
稀代の小説家・五木寛之の歩みは金沢から始まりました。若手作家の登竜門である直木賞も金沢で受賞されています。ちなみに、受賞の連絡を受けた香林坊の純喫茶・ローレンスでは、連絡を受けた黒電話を今も使用しています。

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泉鏡花文学賞は五木さんのアイデア
日本テレビ系列のテレビ金沢に、五木さんの「新金沢小景」というレギュラーコーナーがあります。普通の人なら関心を持たないような小さな風景を紹介するコーナーなのですが、ベストセラー作家の観察眼は流石と言う他ありません。
実は、五木さんの義理のお父さんは金沢市長の岡 良一氏でした。「縁は異なもの」ということわざがありますが、その通りですね。
岡市長が娘婿の五木さんに金沢の振興策のアイデアを求めた際に、五木さんから出たのが、文学賞を作りましょうというアイデアでした。そのような経緯で誕生したのが「泉鏡花文学賞」です。五木さんは第1回から審査員をされています。

主計町茶屋街は五木さん所縁の町
五木さんは主計町茶屋街がご贔屓です。ご自身のエッセーの中には鍋料理の「太郎」の記述がよく出てきます。そのお店の2階が舞台となった小説が1978年に発表された「浅の川暮色」です。お店の前には小説の文学碑が置かれています。
主計町の裏通りにある「あかり坂」は五木さんが命名しました。この石段坂はずっと名無し坂だったのですが、2008年に主計町が五木さんに坂の命名を依頼して「あかり坂」と名付けられました。標柱には五木さんのメッセージが記されています。


金沢文芸館の2階は「五木寛之文庫」
主計町茶屋街のすぐ近くにある金沢文芸館の2階は「五木寛之文庫」と名付けられ、五木さんのゆかりの品々が展示されています。オープンは2005年11月でした。
五木さんは、各地から寄せられる自身の記念館設立の提案をすべて辞退されていたらしいのですが、金沢文芸館という新しい施設の役に立つならとの思いから協力したのだそうです。
当初は、五木さんの意向を汲んで、出版の現場を紹介するという趣旨の展示がなされていましたが、数年前に大幅に改修され、今では完全に「五木寛之記念館」のような展示となっています。
ファンにとっては記念館的な展示となったのは大歓迎ですが、ご本人としては、内心忸怩たる思いがあるかもしれませんね。

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