金沢は藩政期から受け継がれる用水の街

金沢のおたっき～ポイント#8

城下町・金沢は用水をはじめとする水路をよく目にする街です。金沢市によると、現在、金沢市内には55本の用水が流れています。偶然にも郷土のスーパースターである松井秀喜さんの現役時代の背番号と同じ数です。

用水というのは興味のない人にとってはただの小川ですが、頭の中に「この水はどこから流れてきたのだろう？」という思いが浮かんでくると、小川の流れを辿ってみたくなるものです。

現在の金沢の中心部には、辰巳用水、鞍月用水、大野庄用水という3つの用水が流れています。いずれも金沢の二大河川のひとつである犀川から取水されており、中心街の景観に潤いを与えています。

まず、このページのトップ写真にある辰巳用水は小立野通りから兼六園に向かって流れ、石川県立美術館の裏手から金沢市立中村記念美術館へと下る「美術の小径」に沿って、滝のように流れ落ちていきます。

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市民になじみは広坂通りの用水

高台から平地へと流れ落ちた辰巳用水の水は、本多通りを経由して、金沢で有数の主要道路である旧広坂通り（現在の百万石通り）を流れます。市役所前を流れる水路は、金沢市民が子供の頃から見てきた景観です。

また、辰巳用水は本流から分水して兼六園にも引き込まれ、霞ヶ池、瓢池といった園内の池を満たしています。

長町武家屋敷跡を流れるのが大野庄用水です。川沿いに続く土塀の景観と一体化し、緩やかに蛇行しながら流れています。

水路には「一の橋」「二の橋」「三の橋」「四の橋」とナンバリングされた橋が架かっています。橋の上から眺める用水と土塀のコントラストは絶好の撮影スポットで、特に欧米からの男性観光客がカメラを向けているシーンをよく見かけます。

大野庄用水は、初代藩主・前田利家が金沢城を本格的に築城する際に、木材の運搬ルートとして利用されました。

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かつて金沢では、道路の確保のために用水に蓋（暗渠化）をして道幅を広げた時期がありました。

金沢は太平洋戦争で幸いにも戦災を免れたことから旧い道がそのまま残り、自動車の台数が増加の一途をたどっていた頃には、用水を暗渠化して車線を増やす政策が市民に受け入れられていました。

道路事情から蓋をされていった用水でしたが、金沢市が1996年に制定した「用水保全条例」によって、暗渠化されていた用水の蓋が次々に開けられ、金沢の中心部に水のせせらぎが戻ってきました。

開渠化の良い例が鞍月用水です。鞍月用水は金沢のメインストリートである百万石通りに沿って流れている用水で、用水沿いの曲がりくねった道路は百万石通りの裏通りとなっています。

かつて暗渠化されていた鞍月用水は今では可能な限り開渠化され、金沢の中心部の飲食店街である、せせらぎ通りや柿木畠の景観を潤しています。また、飲食店街を抜けた後も金沢駅方向に向かって美しい散歩道を演出しています。

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水路で金沢の景観に潤いを与えようという考え方は都市計画にも生かされています。金沢の中心部にできた新しい道路や施設には、既存の用水から水を引き入れることで新たな水路が造られています。

かつての県庁舎を改修したしいのき迎賓館の前に広がる「しいのき緑地」を流れる水路は、兼六園に引き込まれた辰巳用水の分流が、霞ヶ池～瓢池と経由してきた水で、逆サイフォンで汲み上げられています。

金沢の主要繁華街のひとつである武蔵ヶ辻と金沢駅を結ぶ金沢駅通りの水路も、辰巳用水から取水されています。

金沢駅通りは、観光で金沢を訪れる方にとって最初と最後に通る道ですが、車道と歩道の間を流れる小川が駅前の景観に溶け込んでいます。2つの車線を流れる水路は金沢駅の「もてなしドーム」で合流し、爽やかなせせらぎを響かせています。

金沢の街を歩かれる際には、随所に見られる水の流れもお楽しみください。

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