金沢の美術館・記念館#13
徳田秋聲、室生犀星とともに金沢の三文豪の一人に数えられているのが、浪漫と幻想の世界で女性たちを魅了してきた泉鏡花です。
泉鏡花は1873年(明治6年)に金沢市の下新町(しもしんちょう)で生まれました。本名は鏡太郎といい、9歳の時に母親を亡くします。そして、12歳の時に父と詣でた麻耶夫人像に母親の面影を重ね合わせたことが、その後の幻想文学の礎になりました。
尾崎紅葉の作品に触れたことで小説家を志すようになった鏡花は、上京し紅葉の門下生に。紅葉は門下生の中でも鏡花をことのほか可愛がったと伝えられています。作品に入れられる紅葉からの添削が鏡花の才能を磨いていきました。
そして『義血侠血』『高野聖』『婦系図』『歌行燈』などの名作を生み出し、1939年(昭和14年)にこの世を去りました。
泉鏡花記念館の展覧会 ・開館25周年記念「泉鏡花記念館名品展-四半世紀の軌跡-」(10/2~11/4、11/7~12/8) |
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鏡花の幻想文学を育んだ艶やかな環境
泉鏡花記念館は鏡花の生家跡に建設されたミュージアムです。記念館のある下新町は主計町茶屋街の隣町で、記念館の前の通りは新町・鏡花通りと名付けられています。
観光でお越しの方は、ひがし茶屋街から主計町を経由して泉鏡花記念館へと向かうのもいいでしょう。浅野川沿いの鏡花のみちから裏通りに入り、暗がり坂を上って久保市乙剣宮の境内を抜けると、左手に泉鏡花記念館へと通じる和風の門が見えます。
お時間のない方は外観だけでも
主計町茶屋街の裏道を歩いて記念館までくると、鏡花の浪漫と幻想を育んだのはこの艶やかな周辺環境であったと思えるのではないでしょうか。
門を入ると前庭があり、鏡花父子の銅像が設置されています。この場所は生家跡に建てられた施設ですので子供の像が鏡花です。そして、前庭の向こうに和風建築の本館が佇んでいます。
お時間のない方は、記念館の前庭をご覧になるだけでも十分に雰囲気を感じることができます。
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鏡花の浪漫と幻想を醸し出す内装
和風建築の格子状の自動ドアから館内に入ると、受付までの純和風のエントランス空間にはロマンチックな雰囲気が漂っています。
受付横にあるミュージアムショップへの入口の格子戸は、鏡花の終の棲家となった「番町の家」(現東京都千代田区六番町)の玄関をイメージしています。
天井を見上げるとモジャモジャとしたものが吊り下げられていますが、記念館のリーフレットには『高野聖』の蛭の森をイメージしたとあります。
雀のお宿
エントランスロビーの外にはミニ庭園が設けられています。これは「番町の家」にあった一坪半ほどの庭をイメージしたものです。
ミニ庭園には、屋根が檜葺きになった三十センチ四方の台が置かれています。記念館に掲出されている解説文によると、この台は “雀のお宿” と名付けられた雀の餌台とのことです。
鏡花夫妻は、飛来する雀に飯粒などを与えて愛玩していたと伝えられています。
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女性に人気のミュージアム
2つある展示室の手前の展示室では、鏡花の年表がパネルで紹介されている他、自筆資料、初版本、生前のこだわりの遺愛品、代表作のジオラマなどが常設展示され、奥の展示室では企画展が開催されています。
また、ミュージアムショップでは鏡花原作の書籍をはじめ、図録やポストカーなどのオリジナルグッズが販売されています。
泉鏡花記念館の入館料は一般が310円、65歳以上が210円で高校生以下は無料です。開館時間は午前9時30分から午後5時(入館は午後4時30分)までで、火曜日 (祝日の場合は翌平日)、年末年始、展示替えの期間は休館となります。
なお、展示室での写真撮影は禁止されていますが、入口付近から館内の雰囲気を撮影するだけでしたらokです。泉鏡花記念館はひがし茶屋街から近いこともあって、女性の来館者が次々に訪れています。
泉鏡花文学賞は地方の文学賞の先駆け
金沢市では1973年(昭和48年)に『泉鏡花文学賞』を制定しました。この賞はその年に刊行された単行本の中から、鏡花の作風にみられるような浪漫性の高い作品を表彰するもので、毎年11月の授賞式の模様は地元テレビ局で大きく報道されています。
ちなみに、地方自治体が主催する文学賞としては、泉鏡花文学賞が全国で最初に制定されたものです。
利用案内
泉鏡花記念館
いずみきょうかきねんかん
住所:金沢市下新町2-3
TEL:076-222-1040
料金:一般 310円、65歳以上 210円、高校生以下 無料
時間:午前9時30分から午後5時(入館は4時30分まで)
休館:火曜日 (祝日の場合は翌平日)、展示替え期間、年末年始
撮影:展示室の撮影NG
泉鏡花記念館ホームページ
最寄りのバス停
・金沢周遊バス、路線バス「橋場町」徒歩3~4分
最寄りの観光名所
・主計町茶屋街から徒歩2分
行き方の参考ページ
・主計町茶屋街への行き方
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