2021年10月19日付の北國新聞に、無の境地を演出する鈴木大拙館が開館10周年を迎え、記念の茶会が開かれたという記事が掲載されていました。
『和(やわらぎ)』の世界と名付けられた記念茶会では、茶道裏千家・今日庵業躰の奈良宗久さんが亭主を務め、大拙と親交のあった茶道裏千家・前家元の千玄室氏を正客に迎えました。
「水鏡の庭」に囲まれた「思索空間」に設けた立礼席では、千氏が茶会のために手掛けた軸「茶禅同一味」や大拙の書が掲げられ、和菓子は水面に映る月を表した「水月」が用意されました。
鈴木大拙は著書「禅と日本文化」の中で、茶は自然と一つになりたい憧れの美的表現であるとしています。茶会の名称は大拙が茶の湯の精神を「和らぎ」と表現する一節になぞらえたとのことです。
奈良さんは「大拙の思想は現代に通じる。茶とともに言葉一つひとつの重みを味わってほしい」と語りました。
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経済同友会からの提言が契機に
鈴木大拙館の建設に際しては、金沢経済同友会が2005年の定時総会で提言。当時の山出保市長が2008年に同友会との意見交換会で整備する方針を示し、2011年10月、大拙の生家近くにオープンしました。
金沢ゆかりの国際的建築家である谷口吉生氏が設計を手掛けた同館は、建物自体の評価も高く、街中の金沢を代表する建築物となっています。
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オープン直後は独り占めできました
私が初めて鈴木大拙館を訪れたのはオープンして間もない頃で、季節は冬だったと記憶しています。訪れたきっかけは地元テレビ局のローカルニュースで、鈴木大拙館は素晴らしいというコメントを聞いたことです。
当時は北陸新幹線の開業はまだまだ先の話しで、観光で訪れる人も皆無に近かった時期です。私が初めて訪れた日は確か天気も悪かったことから「水鏡の庭」や「思索空間」への見学者はおらず、一人で無の境地を独占しました。
鈴木大拙館がオープンするまで、金沢の人たちの間で鈴木大拙を知っていた人はほとんどいませんでした。また、鈴木大拙館は金沢の人でも少しわかりにくいところに位置していることもあって、オープン直後は閑散としたものでした。
その無名のミュージアムが、2019年には米国の「トリップアドバイザー」が発表した日本の博物館ランキングで第3位に選ばれ、2021年1月にはオープン以来の入館者数が50万人を突破しました。
口コミによって人気ミュージアムに
金沢の人も知らなかった仏教哲学者の鈴木大拙については、当然のことながら、県外から訪れる人にも知られていません。にもかかわらず、10年間で知る人ぞ知る金沢の人気スポットとなりました。その秘密は口コミにあります。
私は観光客の方へのガイドを行うことがあります。初めて金沢を訪れた方の中には「金沢へ行ってきた人にどこへ行けばいい?と聞いたら、鈴木大拙館だけは絶対に行った方がいいと言われました」という方が時折います。
金沢通を自認する人ほど、鈴木大拙館を薦める傾向があるようです。おそらく、無の境地を演出する精神性を体感した人は、観光ルートから少し外れているけれど足を延ばしてよかった、という感覚になるのでしょう。
そして、自力で見つけたこの素晴らしい施設を、次に金沢を訪れる人にも教えたいという気持ちになってくれるのでしょう。ちなみに、コロナ前は、欧米からの来館者がとても多く見られました。これも口コミですよね。
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21世紀美術館から徒歩10分足らず
金沢は、地元の人が食べてほしいものと、観光客が実際に食べて美味しいものが違ったり、地元の人が自慢したいスポットなのに、観光客の方はそれほど感激しないことがよくありますが、鈴木大拙館は双方の意見が一致する施設です。
人気観光スポットのひとつである金沢21世紀美術館からは徒歩10分足らずです。また、兼六園から歩いても10分かかりません。随身坂口から本多の森に出て「美術の小径」「緑の小径」を経由すると近道になります。
無料ゾーンからでも無の境地を感じることができますので、お時間のない方は無理に入館することもないかと思います。金沢を訪れる際には、ぜひ鈴木大拙館にも足を延ばしてください。
KANAZAWA Topics
観光名所の周辺は文化エリア
美術館・記念館 -20選-
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・石川四高記念文化交流館-風情ある赤レンガ校舎
・鈴木大拙館-水鏡の庭で体感する“無の境地”
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ひがし・主計町周辺のミュージアム
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・前田土佐守家資料館-良好に残された藩政期の書状
・老舗記念館-金沢市民が懐かしさを感じる外観
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・金沢建築館-国内でも珍しい建築専門ミュージアム
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寺島蔵人邸 | 武家屋敷跡 野村家 | 西田家庭園玉泉園 | 松風閣庭園 | 辻家庭園
主要な観光名所は8つ+金沢駅
金沢駅 | 兼六園 | 金沢城公園 | ひがし茶屋街 | にし茶屋街 | 主計町茶屋街 | 長町武家屋敷跡 | 金沢21世紀美術館 | 近江町市場
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