2022年9月8日付の北國新聞に、金沢城公園で2年前から遺構調査が続く二の丸御殿に関して、再建に向けて大いに参考となる史料が発見されたという記事が掲載されていました。
文化7年 (1810年)の「二の丸御殿」の再建に関する資料は、加賀本多家伝来の文書から見つかったものです。再建竣工の直後に作成され、各部屋の寸法や坪数、ふすまの絵の画題や絵師などが記されています。
これまで確認されている史料に含まれていない情報も多く、2024年着工を目指して実施計画が進む二の丸御殿の復元に役立つと期待されています。
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3年前に発見の史料よりも詳細
新たに見つかったのは「二之御丸御殿御造営御間之内細見」です。1810年9月付で、加賀藩大工頭の井上庄右衛門が作成しました。この文書については、金沢学院大学文学部の本多俊彦教授が確認しました。
細見には、例えば玄関や客人の出迎えに使用した「式台」は「六間 拾一間 六拾六坪」といったように、一室ごとにサイズと広さが記されています。既存の史料にはない情報です。
記載内容は、柱、敷居、天井の部材や調達先、壁土の種類など、極めて詳細にわたります。所々に朱書きの番号が書き込まれ、使用や絵柄を書いた冊子が別にあったと見られます。
遺構調査の契機となった200年前の史料
二の丸御殿の復元に向けた史料に関しては、2019年に金沢市立玉川図書館の近世史料館にある加越能文庫で見つかった「二之御丸御殿御造営内装等覚及び見本・絵型」があります。
2020年の知事の年頭会見で明らかにされた同文書の発見によって、二の丸御殿の復元の可能性が高まったとして、2020年の夏から遺構調査が始まりました。
今回発見された資料はさらに4か月前に作成されたもので、内容の異同から様々なことが分かります。石川県庁の金沢城二の丸御殿復元整備推進室は「史料の厚みが増し、裏付けが増えたことは整備事業にとって価値が高い」とコメントしていました。
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平成の築城から令和の復元へ
江戸時代に加賀藩主・前田家の居城だった金沢城は、明治から終戦までは帝国陸軍の管轄となり、戦後から1995年までは金沢大学のキャンパスが置かれていました。大学の移転後に本格的な復元作業が始まり、地元では「平成の築城」と呼ばれました。
21世紀の金沢城のシンボルとなっている五十間長屋は、重要文化財の三十間長屋が現代まで残っていたことで復元が可能となりました。つまり、外観はもちろん、内部の木材の寸法や組み立て方などを踏襲すれば良かったわけです。
一方の「二の丸御殿」に関しては参考となる建物が残っていなかったことから、復元を検討するところまでも至らず、20年近く空き地のままとなっていました。二の丸御殿の復元は「令和の復元」と言えるでしょう。
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急かさないのは市民性です
今回のような復元事業においては、いつ頃に完成するのかをはっきりと示すよう求める街もあるかと思います。当然のことながら、1年でも早く完成した方が商売になるのですから、作業に携わる職人さんを急かしたくなる気持ちは分かります。
金沢市民の良いところは、職人さんの作業を急かさないことでしょう。中には職人を急かす人もいますが、急いで作っても良いものはできませんよね。それならば、良いものを作るために職人さんに任せるという気風が金沢の人にあるようです。
遺構調査が始まったばかりの頃に、私は調査に携わっている人に「何年くらいで完成するんですか」と聞いたことがあります。その時の答えは「10年くらいはかかるだろうね」というものでした。もしかすると20年かかるかもしれませんね。
金沢は職人にとって住みやすい街
私は金沢美術工芸大学を出た人と話しをすることがあるのですが、県外から金沢美大に入学した人で、油絵や彫刻などの美術科や工芸科を卒業した人は、地元には戻らずに金沢で就職する人を多く見かけます。
その人たちに、なぜ地元に戻らなかったのかを聞いてみると、皆さん異口同音に、金沢の方が創作活動がしやすいからと答えます。確かに、金沢の人は職人さんにはとても寛容で、そんなものを作って儲かるのか!という人は少ないと思います。
その一方で、商売人として大成功する人に対しては、いわゆる「商人の街」ほどは称賛されていないように感じます。金沢はそういう街です。私も二の丸御殿の復元を気を長くして待ちたいと思います。
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