金沢城の五十間長屋は「21世紀の築城」のシンボル

金沢城公園の見どころ#2

兼六園ととともに金沢観光の中心に位置する金沢城公園。兼六園が藩政期からの姿を今に残しているのに対して、金沢城は1881年(明治14年)の火災で城内の施設の大部分が焼失した後、2000年代に入って復元された施設です。

そして、復元のシンボルとなっているのが「菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓」です。「ひしやぐら」「ごじゅっけんながや」「はしづめもんつづきやぐら」と読みます。

この建物は1998年に復元工事が着工され、2001年に完了しました。柱や梁に釘を使用せず、はめ込み式で組み立てられました。石川県のホームページに掲載されている明治時代の消失前の写真と見比べると、驚くほど忠実に復元されています。

ただし、消失前の建物では18cm角の柱を使用していましたが、耐震性を考慮して、復元された建物では24cm角の柱が使用されています。

三の丸広場から眺める五十間長屋が最もポピュラー



住居だったわけではありません

私もそうでしたが、日本のお城についてあまり詳しくない方でしたら、五十間長屋に人が住んでいたのだろうと思われるかもしれませんね。この建物は藩主の住居であった「二の丸御殿」を守るための砦(とりで)でした。

兼六園と金沢城を結ぶ石川門から城内に入ると三の丸広場の芝生が広がり、その先の内堀に城壁が築かれ、城壁の上に2階建ての白壁と白瓦の五十間長屋が構えています。ちなみに五十間という長さは約90mです。

五十間長屋と内堀

石垣の2/3を一度崩しました

五十間長屋をご覧になった方は、石垣が綺麗なことに驚かれるかと思います。私は県外の方のガイドをすることがありますが、あまりにも石垣が綺麗なことから「この石垣は本当に江戸時代のものなのですか?」と聞かれたことがあります。

実は、復元工事の際に上から3分の2の石垣を一度崩しました。と言いますのは、1881年の消失から100年以上が経過していたことから、石垣全体が前に張り出してきていたからです。

そして、どの石がどこにあったのかを記録しておいて、もう一度、藩政期と同じ位置に組み上げました。その際、あまりにも劣化のひどい石は新しい石に取り替えられたそうです。

そのことを知った上で石垣を眺めると、確かに、上部の3分の2と下部の3分の1を見比べると色が違うことが分かります。

復元時に一度崩して組み直した石垣

金沢旅行での観光ガイドを承ります



五十間長屋だけは有料です

金沢城公園は無料で散策できる施設ですが、菱櫓・五十間長屋・橋爪門続櫓だけは入場料がかかります。

入場料は大人(18歳以上)が320円、小人(6歳~18歳未満)が100円で、65歳以上の方は公的機関が発行する証明書があれば無料で入場できます。開館時間は午前9時から午後4時30分(入館は午後4時)で、年中無休です。

建物内では入場口付近で履物を脱いで、履物をビニール袋に入れて移動することになります。

五十間長屋の内部

金沢城公園の見どころ#1
金沢城には重要文化財が3つあります

五十間長屋は武器庫でした

五十間長屋は菱櫓と橋爪門続櫓を結ぶ建物で、普段は武器庫として使われていました。また、非常時の戦闘用の砦として石落しを各所に備えている他、格子窓は銃撃のための鉄砲狭間となっています。

入場時に配布されるリーフレットによると、両脇の菱櫓と橋爪門続櫓を含めた長さは約97mで、橋爪門の二の門を含めると約113mになります。

元々が武器庫でしたので、五十間長屋の中は基本的には何もありません。立派な外観から、お城の中はどうなっているのだろうと期待に胸を躍らせて入場する方は、ちょっと期待外れという感想を抱かれるかもしれませんね。

逆に倉庫だから何もないのが当然だという感じで入場された方は、説明パネルや展示品が意外と充実していると感じるかもしれません。

歴史や建築に興味のある方には面白い施設です

金沢旅行での観光ガイドを承ります

こちらは金沢観光サイトです
トップページの観光メニューもどうぞ



菱櫓と橋爪門続櫓からの眺望は最高

菱櫓(ひしやぐら)は建物が菱形をしていることから名付けられたものです。建物内の四隅の内角は80度と100度で、柱も同じ角度の菱型となっています。

外から見上げるだけでは菱形をしているようには見えないのですが、内部に入ると菱形であることが実感できます。建物内では一部の床板が外され、柱と梁の骨組みが見えるようになっています。

また、菱櫓では城壁を上ってくる賊に対抗するための石落としが設けられています。

菱櫓に入ると建物が菱型をしていることが分かります

櫓の階段は急傾斜

もう一つの櫓である橋爪門続櫓は、三の丸から藩主の御殿がある二の丸へと向かう人を監視するための櫓でした。

菱櫓と橋爪門続櫓は3階まで昇ることができます。怖くなるほど急傾斜の階段を上ります。係員の話しでは、時々転んでしまう人がいるらしいのですが、藩政期当時の姿を忠実に再現するために、急傾斜の階段もそのまま再現されています。

階段を降りる時は、男性でも手すりにつかまって恐る恐る降りてきます。そして「昔はこの階段を駆け降りたのだろうね」という会話が聞こえてきます。

安全性の確保のため、なるべく手の空いた状態で昇り降りできるように、階段の下には下足入れが用意されています。また「降りてくる人がいる時には、フラッシュ撮影はご遠慮ください」という案内板が立っています。

※新型コロナの感染が拡大した2020年に、櫓での密を避けるため櫓への入場が禁止され、現在も櫓に上ることができません。

菱櫓の3階から2階への階段は、ご覧のような急勾配

五十間長屋の利用案内

開館時間
午前9時~午後4時30分(入館は午後4時)。年中無休
入館料
大人(18歳以上)320円、小人(6歳~18歳未満)100円。65歳以上の方は運転免許証や健康保険証などの公的な証明書があれば無料。
※「五十間長屋+兼六園」セット利用券が500円で販売されています。

Guide
兼六園・金沢城周辺の16施設の共通券「文化の森おでかけパス」

金沢城公園への行き方

金沢の地図が表示されない時は「リロード↺」

NEXT - 石川門、河北門、橋爪門は金沢城の三御門

金沢城公園の関連ページ

金沢城公園の見どころ

金沢城公園への行き方


金沢城公園の周辺スポット

金沢城公園から他の観光名所へ

主要な観光名所は8つ+金沢駅

金沢旅行の予備知識 #2
金沢の強みは「城下町なのにお城が主役ではない」

金沢旅行での観光ガイドを承ります

こちらは金沢観光サイトです
トップページの観光メニューもどうぞ

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

金沢観光ガイド 南 武志

観光客の方が「ひがし茶屋街」の最寄りのバス停に並ばれているのを見て、兼六園も近江町市場も歩いて10分なのに…と思ったことが、このサイトをはじめたキッカケでした。 金沢の街は歩いて回れます。自分だけの観光プランで城下町・金沢を満喫してください。

2016年5月27日