2001年2月3日の北國新聞に、兼六園の金城霊沢(きんじょうれいたく)が『金沢版トレビの泉』になっていることに対して、管理する金沢城・兼六園事務所と金沢神社が困惑しているという記事が掲載されていました。
記事によると、硬貨が投げ入れられることで、湧泉が汚れたり、硬貨が周辺に散らばったりするため、管理事務所では「できればやめてほしい」と呼び掛けています。
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管理事務所と金沢神社の言い分は?
管理事務所の担当者は「やむを得ず回収している。大っぴらに禁止とは言わないが、小銭を投げ入れる場所ではない」とのこと。硬貨は毎年6月、百万石まつりを前に行う清掃と同時に回収され、公園の管理費に充てられています。
1年前には、地元住民が周辺に散らばる小銭を見かねて、近くに賽銭箱を設置しようとしましたが石川県の許可を得られませんでした。
兼六園に隣接する金沢神社では、日頃から境内の掃除に合わせ金城霊沢の周辺も掃除します。その際、湧泉の周辺に落ちている硬貨を回収し、管理事務所に届けています。
金城霊沢では芋掘り藤五郎が砂金を洗ったとする言い伝えから、硬貨を洗おうとする参拝者もいるそうで、金沢神社では神聖な水や周辺をあまり汚してほしくないとして「お金を洗う場合はせめて神社の手水舎でしてほしい」とコメントしていました。
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投げ銭くらいは大目に見ませんか
金城霊沢とは金沢の地名の由来とされている湧泉のことです。かつて金沢では砂金が採れたらしく、砂金を水辺で洗うことから「金洗沢」と呼ばれ、それが縮まって「金沢」となりました。その砂金を洗った地とされているのが金城霊沢です。
現在は随身坂料金所から園外に出たところに位置しているものの、元々は金沢神社とともに兼六園の一部です。当サイトでは、金城霊沢が『金沢版トレビの泉』になっているという話題を以前に掲載しましたが、まさか管理事務所や金沢神社で否定的に受け止めているとは思いませんでした。
私は、硬貨を投げ入れる程度でしたら大目に見てあげてほしいなと思っています。
投げ入れられた小銭は幸福感の証
そもそも、硬貨を投げ入れる人は、迷惑をかけようと思って投げ入れているわけではありません。兼六園の景観に感激して、またこの場所を訪れたいとの願いを込めて投げ入れています。つまり投げ入れられた硬貨は来園者の幸福感の表れだと思います。
金沢には『金沢版トレビの泉』となっている水辺が何か所かあります。私が確認した限りでは、兼六園のさざえ山の山頂に置かれている手水鉢と、金沢駅のもてなしドーム地下広場の水辺にも硬貨が投げ入れられています。
私は県外から金沢を訪れる方をガイドすることがありますが、さざえ山の手水鉢に投げ入れられている1円玉や5円玉を見たお客様から「これは、またここに戻ってきたいという思いを込めて投げ入れられているのでしょうか?」と聞かれたことがあります。
私が「おそらくそうだと思います。イタリア人が最初に投げ入れたのかもしれませんね」と回答したところ、そのお客様は「私もここに戻ってきたいです」とおっしゃって、財布から1円玉を取り出して投げ入れていました。
硬貨を投げ入れる人は、お金を捨てているわけではありません。またここに戻ってきたいという願いを込めて投げて入れているのです。
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本当に切実な問題なのか?
硬貨の汚れが著しく水質を悪化させた結果、街中の用水を泳ぐコイやフナが大量に死んでいるとか、投げ入れられたコインが湧水の噴出口に蓋をして湧泉が出てこなくなったことで、別のところに水が湧き出てしまっているなどの弊害があるのでしたら理解できます。
ただ、現実問題として、硬貨の汚れがそれほど水質を悪化させるとは思えません。なぜなら、金城霊沢は湧水によって水が枯れることはなく、霊沢から市中へと流れ出ているからです。
確かに、金城霊沢を掃除する管理事務所の人たちにとっては、投げ入れられた硬貨を回収するのは手間だと思います。ただ、その手間は、訪れた人たちの幸せな思いを拾い集めるのだと解釈すれば、笑いながら回収できるのではないかと思います。
それから、私は金城霊沢で硬貨を洗っている人を見たことはありません。硬貨を洗う人がいるのは事実なのだと思いますが、ごくごく一部の人なのではないでしょうか。
また、霊沢の周りに硬貨が落ちているのも見たことがありません。もし、私が本場のトレビの泉でコインを後ろ向きに投げて、コインが泉の外に落ちた場合は拾ってもう一度投げ入れます。カラスが金城霊沢に落ちている硬貨を外に持ち出していることは考えられませんかね?
以前に、さざえ山にある三重石塔の屋根に1円玉が載っているのを目にしました。その時は「こんなところにお金を放り投げる人がいるのか」と驚いたのですが、もしかすると、これもカラスの仕業なのかもしれません。人間はお金は捨てませんよね(笑)。
楽しい街だから観光客が増えたのです
北陸新幹線の開業を契機として、金沢には国内外から大勢の観光客が訪れるようになりました。私自身は、開業直後の金沢ブームはすぐに終わると思っていましたが、コロナ禍による減少以外では、丸6年になろうとしている現在も観光客は減っていません。
観光客が増え続ける大きな理由は、金沢が楽しい街になったからだと私は考えています。女性に大人気の金箔ソフト、着物レンタル、工芸体験、抹茶をはじめ、金沢21世紀美術館や鈴木大拙館などのミュージアムめぐりも、金沢を楽しい街にしてくれました。
ローマのトレビの泉のように「またここに来られますように」との願いを込めて硬貨を投げ入れる行為も、21世紀の金沢の楽しさのひとつです。観光で訪れる方を遊ばせてあげてはいかがでしょうか。
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