金沢21世紀美術館-topics-

金沢21世紀美術館の新しい館長は良い人選ですね

2024年6月30日

2024年6月29日付の北國新聞に、金沢21世紀美術館の新館長に鷲田めるろ氏が有力との記事が掲載されていました。着任は2025年4月が想定されているとのことです。

今年3月の北國新聞で、現館長の長谷川祐子氏が2025年3月の任期満了にともない退任する意向と報じられていました。退任報道から3か月。新しい館長のメドが付いたようで何よりです。私はとても良い人選だと感じています。

金沢21世紀美術館



鷲田めるろ氏略歴

北國新聞の記事によると、金沢市が、金沢21世紀美術館の5代目館長に、鷲田めるろ氏 (十和田市現代美術館館長) を起用する方向で調整に入ったことが関係者への取材で分かったとのこと。

鷲田氏は2004年に21美が開館した際に学芸員を務めていました。京都市出身で東大大学院美術史学専門分野修士課程修了。東京芸術大学大学院准教授、金沢美術工芸大学名誉客員教授も務めています。

1999年に21美の建設事務局学芸員になり、人気作品「スイミング・プール」などの恒久展示作品の設置を担当。開館後は展覧会の企画や構成を担うキュレーターを務めました。

ベネチア・ビエンナーレ国際美術展 (2017年) で日本館のキュレーターに選ばれ、2018年の退職後は、国際芸術祭「愛知トリエンナーレ2019」のキュレーターを務めました。そして、2020年に青森県の十和田市現代美術館の館長に就任しました。

スイミング・プール

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私は新館長に期待しています

21美の新しい館長の人選については、私も大いに注目していました。北國新聞の記事を読む限りでは、鷲田めるろさん自身が、21美の館長就任に前向きなのかどうかは分かりませんが、就任していただけるなら良い人選だと思います。

なぜなら、21美のスタートアップ期を経験しているからです。

金沢21世紀美術館は、今でこそ金沢を代表する観光地として全国メディアで紹介され、金沢の人たちも、21美を誇りに思えるようになりましたが、オープン当初は、金沢の美術界の重鎮と呼ばれる人たちを中心に大バッシングを受けていました。

お買い物帰りの主婦が気軽に立ち寄れる「市民に開かれた美術館」という設立コンセプトが理解されず、石川県内の美術関係者からは「21美はガラクタを買い集めている」と陰口を叩かれたそうです。

館内をドライブした三輪車もガラクタ!?

四面楚歌の環境から逃げなかった人

21美は、上記のような四面楚歌の状態からスタートしました。鷲田さんは今年51歳ですが、1999年から21美の設立に携わったわけですから、大学院を出て間もない頃の26歳から、現代アートの最前線で活躍してきたことになります。

現代アートが国内でまだまだ市民権を得ていない時期に金沢に居を構え、色々な場面で顔を合わさなければいけない金沢の美術界や経済界のお偉いさんからバッシングを受ける環境の中で、よくぞ逃げなかったと思います。

街で一番の嫌われ者という環境から逃げることなく、地道に市民への理解を広め、当時は全国的に見ても稀有な存在だった21美の成功を現場で経験していることから、私は、鷲田さんは21世紀美術館の館長に相応しいのではないかと思っています。

ところで、鷲田めるろさんって男性?女性?と思われている方もいるかもしれませんね。鷲田さんは男性です。お父様が哲学者で、フランスの哲学者のメルロー=ポンティにちなんで名付けられました。

21美ではオフィスもガラス張り

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21美は“美術館”or”アート広場”!?

このサイトで何度か触れてきましたが、金沢21世紀美術館には大きな問題点があります。それは、アート広場という現実と、美術館でありたいと願う学芸員の理想との間に大きなギャップがあることです。

21美は“美術館”という名前が付いていますが”アート広場”と呼ぶに相応しい施設です。来館者の大多数は、今、何の展覧会をやっているのかを知らずに訪れます。楽しいから集まってくるのです。アート広場だから来館者の笑顔が弾けるのです。

ただ、私が見る限り、21美で働く人たちは「21美は美術館」という意識で業務に携わっているようです。もちろん、美術館という意識で仕事をするのは構わないのですが、お客様との間に心の垣根を作るような顧客対応はやめるべきです。

要するに、来館者ともっと笑顔で会話をしてくださいということです。現在の長谷川館長になってからは、展示室の係員が来館者からの質問に笑顔で答える姿が見られるようになりましたが、アミューズメント施設と比べるとまだまだです。

子供たちが犬の着ぐるみでパトロールしたことも

美術館とアート広場の融合

「アート広場にある美術館」が開館20周年を迎えた金沢21世紀美術館の新たなコンセプトではないかと私は思います。専門知識を駆使した独創的な企画で美術館としての評価を高めながら、一方で、係員と来館者との笑顔のキャッチボールを推進する。

日本人は美術作品を「分かる or 分からない」で括りがちですが、現代アートは「面白い or 面白くない」が評価基準です。

フェルメールの作品を見て「たいしたことないな」と言うと美術に詳しい人からバカにされますが、スイミング・プールを見て「つまんない」と言っても、それはそれで、その人の作品に対する評価です。

現代アートでは作品だけでは未完成です。作品と人が融合して完成します。だからこそ、21美ではほとんどの作品が写真撮影okなのです。美術館とアート広場の融合。私は鷲田めるろ氏なら、その課題をクリアできるのではないかと期待しています。

タレルの部屋

金沢市が起用という表現はおかしい

最後に。ちょっと細かいことをひとつ指摘させていただきます。北國新聞の記事についてです。記事には「金沢市が鷲田めるろ氏を起用する方向で調整に入った」と記されていますが、起用するという表現は明らかに上から目線ですよね。

素晴らしい人材に館長になってもらうのですから、起用ではなく招聘という表現が正しいのではないでしょうか。

取材した記者の感性で「起用」としたのかもしれませんが、もし、金沢市の担当者が「起用」と言ったのでしたら、それは違うんじゃないのと言いたくなります。

25年前は、社会に出たばかりの鷲田さんを採用してあげたのかもしれませんが、彼は、今や全国の美術館が手に入れたいスーパー人材です。鷲田さんの好きにやってくださいという意味も込めて、招聘という言葉を使ってほしいものです。

21美で予想外のヒットは「ウサギの椅子」

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