近江町市場の見どころ#1
金沢市民の台所・近江町市場が、金沢の観光コースに組み込まれたのは1970年代後半のことです。地元のテレビ局で「近江町市場で新鮮なお魚を買って帰る観光客が増えています」と、ある種の驚きとともに報じられていました。
私の記憶では、東京から来たという男性が、ビニール袋に魚を入れたままの状態で「新鮮だから良いよね」と答えていましたが、私は「東京に着くまでの間に魚が腐らないのだろうか?」と素朴な疑問を抱いたものです。
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時代の流れとともに観光地に
その後、クール便などの宅配サービスの向上によって、産地直送が日本人の消費行動のひとつとなっていくにつれて、近江町市場は金沢を代表する観光地へと成長していきました。
そして、北陸新幹線の開業後は、金沢駅から一番近い観光名所として近江町市場はますます賑わっています。
以前は、新鮮な魚を買うことを目的として訪れる人が多かったのですが、最近ではお買い物には興味はないものの、どういう場所なのか見ておきたいという観光目的の人が増えているように思えます。
ちなみに、現在の金沢には “近江町” という町名はなく、青草町、下堤町、十間町、上近江町、下近江町の5つの町の商店街が集まって一つの市場を形成しています。
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近江町市場は2021年に開場300周年
近江町市場の公式サイトの「おみちょの歴史」には、1690年(元禄3年)にお隣の袋町の魚市場が現在の場所に移り、1721年(享保6年)に竪町付近にあった魚市場が移転してきたことで「近江町市場の原型ができたらしい」と記されています。
江戸時代にはお堀の内側の金沢城に近いエリアに魚市場が設けられ、お堀の外側のエリアに野菜市場が設けられました。
近江町市場は、金沢城と港のある宮腰(現在の金石)を結ぶライン上に位置しています。つまり、新鮮な魚を運びやすい位置に魚市場が形成されたわけです。そして、明治期に市場と港の間に金沢駅ができ、駅に到着する野菜も近江町市場に集まるようになりました。
近江町市場の見どころ#6
お買い物せずに歩くだけで楽しい近江町市場
元々は2つの市場でした
現在の近江町市場は、青果市場の「青草辻」と鮮魚市場の「近江町市場」という2つの市場が1つになってできた市場です。現在も市場の中心部を走る「中通り」の下には、かつてのお堀(辰巳用水)が流れています。
近江町市場は、1904年(明治37年)に石川県から「青草辻近江町市場」の名前で認可を受けました。交差点の角にある「むさし口」の脇には「官許 金澤青草辻近江町市場」と記された石碑が建っています。※このページのトップ写真です。
ただ、金沢の人たちが近江町市場まで出かける時は、野菜ではなく魚を買いに行くことから、いつの間にか青草辻が外されて市場全体が近江町市場と呼ばれるようになりました。
金沢は都市型テーマパーク!
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近江町市場は観光地「おみちょ」へ
村松友視氏の著書『金沢の不思議』に「金沢人は近江町を “おみちょ” と発音する」との記述があります。この文面は私にとっては新鮮な発見でした。同著には、自分も「おみちょ」と言ってみたが微妙に違うとも記されています。
金沢育ちの私にはよく分かります。こっちの人は「おみちょ」と言っているわけではなく「おうみちょう」と言っているのです。そして「おう」も「ちょう」も伸ばす音であることから、早口で言うと「おみちょ」と聞こえるわけです。
近江町市場の公式サイトのトップページにも「おみちょ」という言葉が出てきます。県外の人が聞こえる「おみちょ」という発音を、近江町市場の愛称としてアピールするのは面白い試みだと思います。
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