2023年8月22日の北國新聞に、金沢21世紀美術館でスタッフの退職が相次ぎ、学芸員・専門員のスタッフ数が業務上必要な21名に対して5名足りず、募集をかけても応募が少なく補充できていないという記事が掲載されていました。
記事によると、学芸員と専門員の退職は、2018年度が2名、19年度が0名、20年度が1名で推移していましたが、21年度に5名、22年度に4名が退職し、今年度も8月1日時点で2名が退職しているとのこと。
2021年度から退職者が急増していることから、21年4月に4代目館長に就任した長谷川祐子氏の手腕を疑問視する声があると、北國新聞の紙面には記されていました。
この記事は金沢観光とは全く関係ありませんが、21美が人材補充に苦戦している理由は選考方法にあると感じたことからこの記事を記しています。ちなみに、私自身、東京で広告業界のヘッドハンターとしての実務経験があります。
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財団が前面に出過ぎていることが問題
募集要項などを独自に少し調べてみると、21美で学芸員や専門員として実務に携わる際には、金沢21世紀美術館に採用されるのではなく、親組織の公益財団法人 金沢芸術創造財団に採用され、21美に配属されるという形式を取ります。
金沢芸術創造財団は金沢市役所の第二本庁舎にオフィスを構える組織で、21美をはじめ、金沢能楽美術館、金沢市民芸術村、金沢卯辰山工芸工房、金沢歌劇座などの運営を担っています。
出願希望者は、金沢芸術創造財団のホームページからダウンロードできる「受験申込書」に必要事項を記入のうえ同財団に送付します。受験申込書に「履歴書」「職務経歴書」のひな型が用意されています。第1次選考が筆記試験で、第2次選考が面接です。
出願者全員が筆記試験を受けることができるのか、筆記の前に書類選考があるのか、書類選考がある場合は書類選考の段階から21美の長谷川館長が携わるのかはわかりませんが、金沢芸術創造財団が前面に出過ぎているように感じます。
出願者は21美に出願するのです
金沢21世紀美術館が学芸員・専門員の補充に苦慮しているという記事が本当なら、採用活動における最大の問題点は、21美の公式サイトで人材募集をしていないことだと私は考えます。
出願者は金沢21世紀美術館で仕事をしたくて出願するのです。それならば、21美の公式サイトに「採用」ページを設けるべきです。
21美のサイトに募集要項を掲載して、雇用形態については「金沢芸術創造財団の職員として採用され、21美に配属という形式を取ります」という一文を加えれば良いだけです。職員を募集していることを隠す必要は全くありません。
もちろん、金沢芸術創造財団としても候補者に会うことなく採用はできないと思います。それならば、21美サイドから採用意向の出た候補者と最後に面談をして、最終決定とすれば良いのではないでしょうか。
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採用側のスケジュールでの選考はNG
21美の中途採用では、出願の受付期間が設けられており、筆記試験と面接の実施日が決められていますが、このことは大いに疑問です。21美で働きたければ予定を合わせてくださいというのは、採用側が上の立場だと言っているようなものです。
また、金沢芸術創造財団のサイトに掲載されている今年5月の募集要項には「令和6年4月1日入社」とあります。採用者は4月1日に入社するのが当然という考え方は、いかにもお役所的ですよね。
募集ページには「※令和6年4月1日以前に採用されることもあります」とも記されていますが、それならば、入社日は「応相談」で良いじゃないですか。学生の新卒採用ではないのですから、社会人の中途採用なのですから。
人生の転機は人それぞれです。出願期間や入社日が設定されると、他所で活躍している人材がタイミングが合わずに出願を見送るリスクが出てきます。
中途採用で筆記から入るのは疑問
私は、中途採用の選考で筆記試験から入るのは好ましくないと思っています。特に、金沢21世紀美術館のようなクリエイティブな業界では筆記試験から入ると、頭でっかちな人材を採用することにもなりかねません。
もし、どうしても候補者の基礎知識を知る必要があるのであれば、最初に面接をして、面接試験をクリアした人に、最低限の能力確認として筆記試験を行うのなら私も理解できます。
中途採用とは、ある意味でプロ野球のトレードのようなもので、職場と人材との相性を探しあう機会です。ミュージアムの業界でも、最も能力を発揮できる環境は人それぞれなのではないでしょうか。
逆の見方をすると、アート広場という21美の特異な環境に合致する人材が、筆記試験で落とされてしまうのではないかと危惧します。
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21美の公式サイトで通年採用を
金沢21世紀美術館は公式サイトに「採用」ページを設けて通年採用をすべきなのではないでしょうか。そして、少しでも可能性を感じる候補者は、多少は経歴が劣っていても会ってみることです。隠れた逸材と出会えるかもしれないのですから。
21美で実務に携わっている人には大変失礼な言い方ですが、金沢21世紀美術館には他の美術館にはない “楽しさ” があるのに、そこで働いている人が楽しくありません。はっきり言って、21美のウイークポイントは人です。
北國新聞の記事に、長谷川館長の手腕を疑問視する声があると記されていましたが、前々代の館長だった秋元雄史氏の著書には、長谷川祐子氏は21美の草創期を支えた優秀なキュレーターとして紹介されています。
来館者を遊ばせてくれた2代目館長の秋元氏の次に館長になった方は、それまで許されていた作品の写真撮影を禁止しましたが、4代目の長谷川氏になって再び撮影できるようになりました。長谷川氏が採用したい人材を採用すれば良いでしょう。
私の考えるベストな選考方法とは
僭越ながら、私が考える選考方法を以下に記します。
第1次選考 書類選考
提出書類
・21美指定の履歴書
・職務経歴書 (書式自由)
・自分自身をプレゼンテーション (2,000字程度)
※テーマは指定しません。ゼロの状態から自分自身をプレゼンしてください。
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第2次選考 面接
面接は1日で2回に分けて実施。館長面接は1対1で実施し、現場面接として、直属の上司となる人+学芸部長+金沢芸術創造財団の人事担当者の面接を実施。
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第3次選考 筆記試験
必要であれば、現在実施している筆記試験を第3次選考として実施。
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