2019年9月7日付の北國新聞の社会面トップは、近江町市場で問題となっている観光客の食べ歩きについてでした。
近江町市場商店街振興組合では、歩きながら飲食しないよう求める場内アナウンスをはじめました。北陸新幹線の開業以降、食べ歩く観光客が増え、地元住民からマナーの悪さを指摘する声が寄せられていました。
自粛を呼びかけるタペストリーも掲げられ、紙面では、住民と観光客がともに心地よく買い物ができる「金沢市民の台所」として環境を整えていくと記されていました。
近江町市場では、「この先もずっと、誰もが気持ちよく過ごすことができる、皆様に愛される市場であるために、歩きながらの飲食はご遠慮いただいております」という場内放送が、8月19日から始まりました。
昼食時を中心に営業時間帯に5~6回、録音した音声を流しています。
全国の観光地の懸案「食べ歩き」
近江町市場では、近年、食べ歩きする観光客が目立ち、「見苦しい」「行儀悪い」という苦情が組合に届いていました。
串を持って歩くと、つまずいた際に誤って刺さったり、小さい子供の顔にあたったりする恐れもあり、市場では「今のところ大事に至ったケースはないが、地元の人たちに嫌われると市場の存在意義がなくなる」と話します。
果物を食べながら商品をのぞき込み、汁をこぼしたりする客に毎日のように注意しているという乾物店の社長は「観光客のおかげで飯を食っている部分があり、声高に言い過ぎては商売ができない」と顔をゆがめます。
各店舗からは「放送を始めたその日から、食べ歩きが減ってきた」と歓迎の声が聞かれます。
反面、食べ歩きを楽しみにしている観光客も多く、インスタに掲載しようとクラフトビールを片手に写真を撮っていた東京の女性(31歳)は、「いろんな食べ物を少しずつたくさん食べられるのが食べ歩きの魅力」と語りました。
市場側が自粛を求めていることを知ると、驚いた様子で「迷惑をかけない程度にしたい気持はあるけど、聞いておいて良かった」と理解を示しました。
食べ歩きする外国人も多く、組合は必要に応じて外国語でのアナウンスも検討するとのことです。
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自粛を求めるのは良いが、言い方が問題
近江町市場での食べ歩きの是非については、新幹線の開業以降、地元メディアで何度も取り上げられています。
少し前にTBSの『ひるおび』で、鎌倉の小町通りでも食べ歩きを禁止すべきか悩んでいるというニュースが報じられましたが、食べ歩きについては、近江町市場だけではなく全国的な問題のようです。
以前に、あるニュース番組で、金沢で食べ歩き禁止という話題が出た時に、コメンテーターのマツコさんが「食べ歩きされるようなものを売らなきゃいいのよ」とおっしゃっていましたが、私もその通りだと思います。
食べ歩きというのは、歩きながら食べるから美味しいのです。
40年近く前、私が高校を卒業して上京した際にカルチャーショックを受けたのが、原宿の竹下通りで、クレープを片手に笑顔で歩いている同年代の人たちの姿でした。
今の中高齢の人たちにも、食べ歩きを楽しいと感じる年代を過ごしてきたはずです。それを「見苦しい」とか「行儀悪い」と言って悪者扱いをするのは違うでしょう。
ただ、金沢の中高齢者は、若い頃に食べ歩きの文化に触れていないという一面もありますが(笑)。
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お客様同士のトラブルも要因
近江町市場の食べ歩き禁止については、私は、当初は大反対でした。
しかし、その後、近江町では食べ歩きのお客様が、他のお客様の服に汁を付けてしまうトラブルが起きていると聞いて、今では、食べ歩きの自粛を求めるのも致し方ないという考えに変わりました。
手に持った食材を他のお客様の服に付けてしまったら、被害者はもちろん、加害者となった人も、その後の行程を心から楽しめませんよね。
ただし、近江町市場の言い方は違うと思います。食べ歩きそのものを、見苦しいとか行儀悪いと言って否定するのは、売る方が偉いという殿様商売そのものであり、観光客からの反発を招いてしまいます。
そこで、次のように言えばいいのではないでしょうか。
「近江町市場では、食べ歩きは歩きながら食べるから楽しいことを理解していますが、食べ歩き中に、食材を他のお客様に付けてしまうトラブルが多発していることから、お客様には食べ歩きの自粛をお願いしています」
日本人なら、他人の服に付けてしまうトラブルが多発しているのであれば、食べ歩きを自粛することに理解を示してくれるはずです。そして、日本人がその場で食べていれば、外国人観光客もその場で食べてくれるはずです。
それともう1つ。私の記憶では、1981年当時の竹下通りでは、クレープを大きな紙で包んでいました。つまり、お客様同士がぶつかっても、相手にクリームが付かない配慮がなされていたと記憶しています。
近江町市場の食べ歩き問題のベストな解決策は、お客様同士がぶつかっても、相手の服に食材を付けないような包装資材を考案することだと思います。
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